地方で女性起業が増えている理由。年商200万円のスモールビジネスが成立する地域の土壌

最近、地域で女性の起業が増えてきているように感じます。

ただし、その多くは都心部のスタートアップのように、短期間で急成長を目指すものではありません。年商200万円程度の、地域の中で完結する小さな課題解決型ビジネスが中心です。

この規模の事業は、生活費を単独で支えるには十分とは言えません。それでも成り立っている背景には、夫が働いていて世帯としての生活基盤があること、そして地方のコミュニティが小さな事業を受け入れる環境にあることが関係しているのではないかと考えています。

目次

1. 都市型起業と地方型起業は、成功の定義が違う

都市型起業と地方型起業は、成功の定義が違う

都市型の起業では、売上成長、雇用創出、市場シェア、投資回収が重視されます。0→1のあとに、すぐ規模拡大が求められる世界です。

一方、地方で女性が始める事業は、必ずしも拡大を目的にしていません。地域の困りごとを、自分の生活や家族とのバランスを取りながら、小さく解決していく事業です。

都市型の評価軸では小さく見える事業でも、地域の中では大切な役割を果たしていることがあります。

2. データに見る地方の「雇われない働き方」

図1・表1・表2では、総務省統計局「令和4年(2022年)就業構造基本調査」地域結果 第61表をもとに、有配偶女性の就業形態を整理しています。

有配偶女性人口に占める自営業主等率は、就業者数ベースの加重平均で、三大都市圏が6.47%、地方が8.19%でした。都道府県単純平均でも、三大都市圏6.79%に対し、地方は8.62%です。

この数字は女性起業家数そのものではありませんが、地方では、雇用者として働く以外の就業形態が相対的に多いことを示しています。

図1 有配偶女性に占める自営業主等率の比較(就業者数ベース加重)

表1 三大都市圏と地方の比較

 

表2 自営業主等率が高い都道府県(上位12)

3. 年商200万円の事業が成立する理由

年商200万円程度の事業は、都市部では継続が難しい場合があります。固定費、広告費、競争環境、生活費の水準を考えると、事業単体で十分な利益を残すことは容易ではありません。

しかし地方では、地域のつながりの中で最初の顧客が生まれたり、口コミで広がったり、競合と役割を分け合ったりすることがあります。

また、夫の収入によって世帯の生活基盤が支えられている場合、女性の事業は家計を単独で支えるものではなく、世帯収入に上乗せされる収入や、本人の仕事・役割として成立しやすくなります。

4. コミュニティ内で完結する地方課題解決型ビジネス

地方 ビジネス 女性地方の女性起業は、地域課題と近い場所から生まれることが多いと感じています。

子育て、介護、食、教育、観光、福祉、地域交流、空き家活用。こうした領域では、顔の見える困りごとがそのまま事業の種になります。

大きな市場を取りに行くのではなく、地域の中に役割を持つ。これが、女性を起業に導く地域の特徴ではないでしょうか。

5. 低収益を美化せず、続けられる支援へ

ただし、小さな事業が成立することと、十分な収益性があることは同じではありません。

低い価格設定、女性の労働の過小評価、夫の収入への依存といった課題もあります。だからこそ、支援策には、起業数を増やすだけでなく、小さな事業の収益性と継続性を高める視点が必要です。

会計、価格設定、販路、商品設計、家族との役割分担まで含めた伴走支援が、地方の女性起業には求められます。

まとめ

農業 女性

地方で女性起業が増えている背景には、都市型の成長モデルとは違う、地域のスモールビジネスを受け入れる土壌があるのではないかと感じています。

年商200万円程度の小さな事業であっても、地域課題を解決し、本人の役割を生み、地域の中で必要とされるなら、それは地方にとって意味のある起業です。

女性起業を支援するためには、規模拡大だけでなく、地域内での持続性や信頼関係、生活との両立を評価する新しい物差しが必要です。

The following two tabs change content below.
アバター画像
西谷 佳之(Yoshiyuki Nishitani) 0→2事業加速アクセラレーター / MBA / 株式会社エオストレ 代表取締役 地方銀行で約30年勤務し、1,000社以上の中小企業を支援。支店長として全店舗を表彰店に導いた融資・財務のスペシャリスト。大阪大学でベンチャー創生に携わった後、自らも複数のベンチャー経営に参画。現在は、自社フェムテックベンチャーを経営しつつ、関西にて複数の大学非常勤講師として起業教育に携わる一方、大阪と高知を拠点に、「0→1」及び 起業直後の「1→2」フェーズに特化した伴走支援を行う。著書・寄稿多数。銀行員の「数字の目」と経営者の「現場力」で事業の生存率を高めている。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次