MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

クラウドファンディング 創業 資金調達

本当に創業時のクラウドファンディングは有効なのか ①

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創業とクラウドファンディング

最近、創業時にクラドファンディングを使うことを勧める記事をよく目にします。たしかに、金融機関融資と異なる新たな調達手法なのですが、それらの記事のほとんどは、クラウドファンディングのおおまかな仕組みを説明し、資金調達するためにクラウドファンディングの導入を勧めるといったもので、具体的な理由や、導入するリスクなどに触れているものは非常に少ないのです。中には「返済不要の資金調達」「返さなくて良い資金」などと大きく述べている記事まであります。

本当にそうなのでしょうか? これから何回かに分けて、創業時のクラウドファンディングについて私なりの解説をお伝えしたいと思います。

クラウドファンディングとて返済は必要

skeeze / Pixabay

最初に述べておきますが、クラウドファンディングで資金を集めたら返済はしなければならないのです。ただ、返済が「お金」なのか「株式」なのか「商品」なのかはクラウドファンディングの形態によります。借りたら返すのは当たり前なのです(寄付型クラウドファンディングだけは少し異なります)

特に創業時において、資金調達をクラウドファンディングに頼り切ってしまうことは大きなリスクを伴います。

今回は、創業時の資金調達とクラウドファンディングについて述べてみたいと思います。

通常の創業時の資金調達について

上の表は 経済産業省から発行されている「2017年度中小企業白書」から抜粋したものですが、創業時の企業の資金調達形態は8割以上が手元資金(自己資金)を持ち、そのうえで資金調達をしていることがわかります。

自己資金以外の資金調達をもう少し詳しくみてみますと

・知人など人的つながりによる借入

・銀行プロパー融資(創業枠を設けている銀行など)

・日本政策金融公庫融資

・信用保証協会保証付融資

・自治体制度融資(保証協会保証付が多い)

・商工会議所等の制度融資(マル経融資など)

・自治体補助金,助成金

といったところが挙げられます。

特に、日本政策金融公庫などは創業融資に前向きで調達しやすいのではないでしょうか。しかし、金融機関からの融資はハードルが高い、融資審査に通る気がしない といった声は多くあります。そこで、クラウドファンディングなら気軽に調達出来るという話になるのでしょう。では、クラウドファンディングとは本当に有効な資金調達ツールなのでしょうか。クラウドファンディングについてもう少し詳しく見ていきます。

クラウドファンディングとは

クラウドファンディングとは「群衆:Croud」と「調達:Funding」を合わせた造語で、インターネット上にて多くの人から資金を募るしくみをいいます。クラウドファンディングには大きく分けて5つの形態があります。

購入型:支援者(お金を出してくれた人)への返済は商品など

寄付型:支援者への返済は基本的には不要

融資型:支援者への返済は資金

ファンド型:支援者への返済は資金

株式型:支援者への返済は株式

後半3つはまとめて金融型と呼ばれることもあります。金融型は調達できる資金は数千万単位と大きいものが多いですが、投資者保護の観点から厳しく規制されています。

手軽で人気なのは購入型です。これは返済が商品などの物品や、イベントへの参加資格、貴重な経験などお金以外のものです。おそらく多くの記事で返済不要というのは、購入型クラウドファンディングのことを指しているのだと思います。

たしかに、購入型はプロジェクトリスクは低いです。また、資金返済は伴いません。ただ、支援者に現金は返さなくて良いのですが、返済物(リターン)に対する資金投下は必要です。調達した資金がすべて手元に残るといったことはないのですが、「返さなくて良い資金」と言われると、集めた資金は自由に使える、そんな感じにも取れますね。

購入型クラウドファンディングと共感

geralt / Pixabay

返済が必要な購入型クラウドファンディングですが、集めた資金を100%同額返済するわけではありません。クラウドファンディングはインターネット上で支援者の「共感」を得て資金を集めるのです。これならこれくらい支払っても良いな、と支援者自身がプロジェクトや商品に共感して決めるのです。なので、どれくらいの割合を返済するのかは、支援者が納得する価値の大きさによって変わってきます。この商品なら3,000円払っても良いと思って支援いただいた商品の原価が1,000円だったとすれば、商品を返済した残り2,000円は支援者から「共感」によって評価された価値だと言えると思います。

クラウドファンディングはマーケティングツール

Photo-Mix / Pixabay

ここまででお気づきになられるかも知れませんが、クラウドファンディングはただの資金集めツールではありません。実は非常に手軽で効果的なマーケティングツールなのです。

たとえば、購入型クラウドファンディングを行うことによって、どのような商品が(価格帯・仕様)、どのような支援者に(年齢・性別・地域)支持されるのかがわかるのです。コストをかけずに様々なマーケティングが出来る便利なツールとして利用されているのです。

クラウドファンディングで出来ること

さらにマーケティング以外にも、クラウドファンディングを行うことでいろいろなことが出来ます。多くの人に見られますから大きなPR効果があります。支援者を集めることでファンを作れたり、商品を見た企業からのビジネスマッチングなども期待できます。予約販売も可能です。資金調達という点だけにとらわれてしまうと、これらのことが見えなくなってしまうかも知れません。

次回は、資金調達とキャッシュアウトの観点から、創業時のクラウドファンディングをもう少し深く考えてみたいと思います。

 

 

テイクオフパートナーズ代表
MBA
2級知財管理士
2級ファイナンシャルプランナニング技能士

西谷 佳之

 

いつもご覧いただきありがとうございます。

 

他各種ビジネスセミナー、個別コンサルタント等を賜っております。

過去講演題目(抜粋)

・スモールベンチャーファイナンスのリアル
・ドラマ「陸王」から紐解く 経営ビジョンが叶える会社の生き方
・オープンイノベーション推進におけるクラウドファンディングの活用について
・銀行から融資を受けるポイントとは
・財務分析の勘所
・女性のためのクラウドファンディング
POC手段としてのクラウドファンディング
・クラウドファンディングと社会的インパクト投資
・資金調達ツールとしてクラウドファンディングの使い方
・起業家がクラウドファンディングで出来ること
その他

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大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。支店長として約10年 4ヶ店 勤務し、推進部地域創生室を経験後、大阪大学産学共創本部に身を置き、特任研究員として大学発ベンチャーの創生に携わる。 東京にてベンチャー参画しIPOを目指した後、大阪にて大学発遺伝子解析ベンチャーのCFOとし経営に参画した経験を持つ。 中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げており、企業支援の傍ら、セミナーなどを通じ起業志向大学生をサポートすることで新しい事業創出の一助を担うことをライフワークとしている。 現在はスピンアウトして起業、自ら手掛けたフェムテック事業の展開を図り、かねてから問題意識を持っていた女性の社会進出の一助を担うことを目標としている。

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