MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

資金調達 銀行

銀行員に嫌われたらお金は借りれないのか     ( 銀行との付き合い方の勘違い)

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銀行営業のメリット

 

私は4年前まで約30年間銀行で法人向け営業を行っておりました。
そのうちの約10年は支店長としてお取引先にお付き合いいただいておりました。

長い銀行員生活の中で、実感したことがあります。銀行が行う法人営業は、他の業種の企業様に比べて、すごく大きなアドバンテージがあるということです。

そのアドバンテージとは、銀行の名刺だけで、中小企業であれば社長や経理部長などの中心的ポジションの方に会えることです。
たとえそれが入行して数年しかたっていない新入行員であったとしてもです。

これってすごいアドバンテージですよね。

多くの他業種の営業職の方が実権者と合うために苦労されています。

それらの方々は対象企業の社員さんの段階で ほぼ断られているのだと思いますが、
銀行だけはそれなりのポジションの人と面談が出来てしまうのです。

 

何故銀行だけ特別なのか

 

何故でしょうか?

もちろん、「お金に絡む話となるので一般職員はタッチしない」などの企業の理由もあると思います。

しかし、多くの中小企業のオーナーを見ていると、どうも銀行員に会いたい!というよりは、

「資金繰りに困らないために出来るだけ銀行と会っておかねばならない」
「銀行との面談は地位の高いものが行うほうが良い」
「会わないと、もしかしたらよい提案を逃すかも知れない」
「銀行に嫌われると資金調達が難しくなる」

といった呪縛のようなものがあるように思えてしまいます。

 

さらに、多くの企業オーナーは、銀行とその他の企業との間で、何か線引きがあるようにすら思われます。

 

本当は銀行も他の企業とそんなに変わらないと思いますが

 

ネット上でも、「銀行との付き合い方」といった記事が多く出ています。
銀行との取引はそんなに難しいのでしょうか。

そういった記事の大半には

銀行に嫌われないようにするにはどうしたら良いか、
銀行には定期的に訪問したほうが良いか、
銀行から信用を得るためにどうしたら良いか

みたいなことが書かれてあります。

銀行員に嫌われたらお金が借りれない

 

では、銀行員に嫌われたら資金調達に影響があるのでしょうか。
逆に銀行員に好かれていれば融資が通るのでしょうか。

中小企業の大きな課題の一つが資金繰りです。

必要な時にお金を調達することが非常に重要になってきます。

たしかに、資金繰りが本当に厳しい時に資金を借りるために、今は銀行の顔を立てておこう というのもわかります。
実際そうやって様々な銀行のセールスに乗ってあげている中小企業オーナーを多く見ますし、銀行員時代は私もよく顔を立ててもらいました。

銀行担当者も人間ですので、良いコミュニケーションを取っておくほうが何事もスムーズにいくと思います。

 

しかし、ちょっと待ってください。

本当に資金繰りが厳しい時に銀行がお金を貸してくれるでしょうか。
今まで顔を立ててもらっていたのだから、お金を貸しましょう! という銀行員、そんなことが出来る銀行員はなかなかいません。

一人の銀行員に好かれたからと言って、いくらその銀行員が肩入れしてくれたとしても、業績の悪さを覆すには至りません

銀行には融資基準があり、多くの行員の意見を経て融資が決定するしくみなのです。

 

逆に、稟議審査に一人の意見が影響しすぎる銀行って怖くないですか?

 

顔を立てても融資にはつながらない

 

銀行は営利団体です。

本当に企業の資金繰りが厳しい時、つまり当面返済のめどが立たないとき
プロパー資金に限って言えば、銀行は返ってくる目途がないお金を融資することはないのです。

もちろん、そのような時のために保証協会があるといっても言い過ぎではないでしょう。

なので、本当に企業が厳しい場合は、多くの銀行が保証協会保証付き融資などで対応しようとします。
保証協会保証付き融資ならば、極論を言えばどこの銀行で頼んでも結果はほとんど変わりません。
(担当者の資質により左右されることは否めませんが)

取引の無かった銀行からでも申し込めます。

つまり、いままで顔を立ててきたからと言って融資の可能性が格段に上がることなんてないのです。

銀行員は、今キャンペーンだから、期間限定だから といってカードやら投資信託やら何かといろいろ売込を行ってきます。
しかし、それに応じたとしても、資金繰りが苦しい時の融資にはつながらないと言って良いでしょう。

繋がっては困りますが

もちろん個人同士の関係で応じてあげるのは良いと思います。
ただ、融資云々とは切り離して考えることですね。

銀行は、決算書等から判定し、基本、お金が返ってくると判定される企業にしか融資はしないのです。
(当然、現状だけでなく、将来見込や所有資産なども加味して検討をします)

ましてや、いろいろやってあげたのに、肝心な時に営業担当者や支店長は転勤していないといったことも多々あるのです。

晴れの日に傘を貸し、雨の日に傘を取り上げると言われるが

 

大まかにいえば、銀行は財務的な観点を中心に検討し、企業が資金に余裕がある時は融資に積極的ですが、
資金に余裕のない時には融資消極的です。これが鉄則です。

晴れの日に貸して、雨の日に取り上げる、銀行は慈善事業でも投資家でもないので当然そうなります

銀行は営利団体なのです。損失を回避する、リスクを回避し、収益を上げる必要があるのです。

当然ですね

だから、日々のセールスや過剰資料の請求などについては、融資と関連付けずに、
不要な場合は拒否しても良いという事を覚えておいてください。

銀行の依頼に応えても 応えなくても、
借りれるときは借りれる、借りれないときは借りれない
割り切った方が良いと思います。

(今後、融資審査にAI導入などがされると、ますますこの傾向は強くなります)

 

1行取引先だから優遇してもらえる

 

銀行は1行取引先を優遇するのでしょうか。

 

たしかに、銀行営業担当者にすれば1行取引先であれば、何らかの優遇はしたいと思うでしょう。

また古くからの一行取引先ですと、当時の担当者が今の役員になっているというようなことがあった場合など、
担当営業店の支店長を飛び越して話が出来たりするので、実際かなり優遇してもらえる可能性もあります。

しかし、これらも根本的に会社の業績が良い時であれば、との前提がつきます。

業績が悪くなった場合、銀行は途端にそっぽを向くのです。

前述の役員に話をしに行っても、彼が審査部の意見を無視し、
個人でリスクまで取るなんてことは考えられません。

 

業績が悪くなっても、取引行が沢山あった場合は、
それぞれの銀行の基準が微妙に違ったりする場合や、
担当者の能力が異なっている場合(高い場合)など、
融資を受けれる可能性は上がります。

調達窓口を増やしておくという事です

しかし、1行取引の場合はある意味そのような他の選択肢が無くなってしまうのです。

 

取った獲物にフタをする

 

また、1行取引の場合、他行の横やりが入ってこないので、
銀行からすれば非常に都合が良い部分があります。

たとえば、現在走っている融資の金利は、約定に則り
たとえキャンペーンなどで低い金利商品が出た場合でも、
自主的に既存融資を乗り換えることはありません。

新たな融資としてはその金利で取り組みますが、通常 既存のものを引き下げることはしないのです。

一行取引先ならなおさらです。
なぜなら他行に低い特別金利を提示されたり、肩代わりされる可能性が無い(極端に低い)からです。

銀行は既存の収益が減ることに対する許容度がかなり低いですね。

取引の有無より情報の有無が重要

 

たとえば住宅ローンなど、一旦借入すると、約定を違える金利変更などの提案はほとんど行いません。

ところが、他行の借り換えキャンペーンなどで低金利商品の情報を得、いざ借り換えのために銀行にアプローチすると、
慌てて金利引き下げなどを提案された方も多いのではないでしょうか。

企業融資も住宅ローンと同様、なにかアプローチが他行から行われたりしない限り、引き下げを検討することはまずないでしょう。

一行取引を前面に押し出して他行売込を断っていると、そのうち他行のアプローチも無くなってしまいます。

それはつまり、企業にとって有利な情報を得ることが出来なくなるということなのです。

実際のところ、一行取引の場合、既存融資の金利は手付かずになってしまいます。

多くの銀行員は積み上げること、新しい融資先や融資を獲得する事に目を向け、
獲得済みの融資にはなかなか目を向けない傾向にあります。

それが一行取引先でいることのリスクに繋がってくるのです。

「一行取引先だから、銀行で一番金利が安く待遇が良いということはまずありません。
当然、銀行は未取引の企業に対し、新規先獲得のために既存商品よりも有利な提案をぶつけることはあります。
そして、その商品は新規先専用で既存先には適応されない
なんてことは、当たり前のようにあります。

一行取引先で銀行取引を続ける場合においても、他行とも面談し情報を入れることが必要だと思います。

あまりにも条件が違いすぎるならば乗り換えることも会社のために意識しておくことをお勧めします。

実績のために借入するか?銀行からの依頼の数々

 

銀行員は、よく「実績作りのためにとりあえず借入しておきませんか?」というアプローチを使います。

これってどうなのでしょうか。

たしかに借入実績(返済実績)については銀行も融資審査時に加味します。

ただし、先述しましたが、結果的に銀行はその時の状況を見て融資をします。
保証協会においても同じです。借りれるときは借りれるのです。

そして、借りれないときに、「実績」がどれくらいのアドバンテージになるのか

そのようなセールストークを投げられた場合、一度取引行に確認してみても良いのではないでしょうか。

 

企業はいくら技術があったとしても資金がつかなければ企業が止まってしまいます。 そのために銀行のいう事には耳を貸してしまうのですが、 その効果はいざという時に発揮するのでしょうか。

 

他にも、

銀行がひっきりなしに来るが面談しなければならないのだろうか、
決算書のコピーはかなりの枚数になるがこちらでコピーすべきなんだろうか、
なかなか融資の結論が出ないんだけど、いつ頃なら催促してもよいだろうか

など多くのご質問をいただきます。当然迷われることは多いと思います。

 

ここでは全ての疑問に回答出来ませんが、
銀行という組織を一営利団体と置き換えればおのずと答えは出るかもしれませんね。

 

中小企業のオーナーや財務担当の方々に置かれましては、銀行を特別視することなく、
もっと対等の立場で取引を進めていただいても良いのではないかと思います。

銀行からの資金調達は、「借りれるときに借りる、借りたいときには借りれない」ということをきちんと押さえ、
前もって調達のタイミングを検討することだと思います。

 

 

 

 

テイクオフパートナーズ代表
MBA
2級知財管理士
2級ファイナンシャルプランナニング技能士

西谷 佳之

いつもご覧いただきありがとうございます。

 

他各種ビジネスセミナー、個別コンサルタント等を賜っております。

過去講演題目(抜粋)

・スモールベンチャーファイナンスのリアル
・ドラマ「陸王」から紐解く 経営ビジョンが叶える会社の生き方
・オープンイノベーション推進におけるクラウドファンディングの活用について
・銀行から融資を受けるポイントとは
・財務分析の勘所
・女性のためのクラウドファンディング
POC手段としてのクラウドファンディング
・クラウドファンディングと社会的インパクト投資
・資金調達ツールとしてクラウドファンディングの使い方
・起業家がクラウドファンディングで出来ること
その他

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大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。支店長として約10年 4ヶ店 全ての支店を業績表彰店舗に導くことに成功。その後推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に携わる。東京にてボードメンバーとしてベンチャー参画し、現在は大阪にて大学発ベンチャーのCFOとし、資本政策や海外子会社設立など経営に参画するとともに、新規商品開発にも関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行での経験やベンチャー経験、MBAの知識をもとに、事業サポートを行う。 クラウドファンディングなどのツールによる直接金融をサポートすることで金融機関融資に頼らない資金調達、創業をアシストする。 また、セミナーなどを通じ起業志向学生をサポートすることで新しい事業創出の一助を担うことを目標としている。

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