MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

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ピルの使用で女性と組織のパフォーマンスを上げる 「企業の福利厚生としてピルに注目するメリット」

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ピルって何

ピル=避妊と連想する方、特に男性は多いのではないかと思います。
もちろん、避妊効果は高いのですが、それには理由があります。

ピルはホルモンのバランスを調整し、いわゆる妊娠中のようにします。
なので、排卵などが行われず、結果として妊娠に結びつかないのです。
そのほかにも、ピルは子宮筋腫などの治療にも用いられます。

ピルが妊娠中と同じ状態にすることによって、子宮内膜が薄く保たれることから、
子宮筋腫のリスクを下げるのです。 妊娠中と同じ状態ということは、生理が無いということですね。
言い方は少し荒っぽいですが、つまり、生理を無くすためにピルが有効なのです。

生理は必要か

では、生理は必要なのでしょうか?

生理によって、苦痛や不都合なことなど、女性は常に多くの症状に対処しています。

生理は必ずあるもの、あるべきものと考えておられますか?

『あるべきものを無くすことは自然の道理に反する、だからピルは服用してはだめ』 と思っておられるのかも知れません

医学的に生理の仕組みを解釈すると、 妊娠を望まない期間に生理は必要ない」 ということになります。

でも、正しい知識がない状態だと
生理をとめてしまうのは体に悪そう」
一度でも生理をとめると、妊娠しづらくなるのかも」
など、間違ったイメージを持ってしまいがちです。

その結果、つらいPMSや生理痛などの症状をがまんしている女性はかなり多いのです。
ここで、認識して欲しいことがあります。 生理はあくまで「妊娠しなかった結果」なので、それ以外の機能はないんです。

生理がくるから妊娠できる、のではなく、妊娠しなかったから、生理が来るのです。

現代の女性が負っている負担

生理と排卵にまつわる婦人科系疾患の多くは、 少子化時代に入ることによって、大幅に増えてきています。

現代の女性は少子化や晩婚化の影響で、昔と比べて出産回数が減り、
生理や排卵が休む間もなく繰り返されることから、
子宮や卵巣に負担がかかるということが指摘されています。

かつて子供を沢山産んでいた時代では、 女性の人生における妊娠・授乳期間の割合が大きく、
この間は生理も止まっていました。 昔の女性の場合、生涯の生理の回数は約50回程度だったと言われています。
これに対して、現代の女性は約450回と、なんと9倍近いのです

この結果、現代の女性には子宮体がん、卵巣がん、子宮内膜症が 増えることになってしまったのです。

生理による女性の仕事パフォーマンスの低下

女性は、生理によって引き起こされる頭痛や腹痛、肌荒れやイライラなどに毎月苦んでいます。

前回のブログにも記載しましたが、経産省が公表しているデータでは、
女性の60%が生理により仕事のパフォーマンスが下がると感じており、
その低下割合は40%にも及ぶのです。
(前回ブログは以下から)

https://consultant-top.com/pms-health-management/%20

企業の40歳以下の女性社員一人あたり最大年間約221万円の労働損失だとの日経BPの試算データがあります。
一定期間、仕事のパフォーマンスが下がることによる損失は、 働く女性にとっては当然ですが、
組織としてもかなり大きいはずです。

多くの女性は、男性のように常にフルパフォーマンスで働いているわけではないです。
女性の仕事パフォーマンスが100%発揮される期間、女性が何の身体の心配もなく働ける期間は、
1か月のうち1週間程度とのデータもあります。

女性として、組織として、良い方向に向かうために

生理が仕事パフォーマンスにとって、大きな障害になっていることはわかりました。
では、どうしたらいいのでしょうか。

実は生理はコントロール出来るのです。

都合の良い時期に生理を迎えることが出来ると、さまざまな不安や悩みが解決します。
仕事の計画も立てやすくなります。 もちろん、回数を減らすことも出来るのです。
どうしたら良いか その方法のひとつに、ピルを活用することが挙げられます。

日本では「ピル=避妊薬」というイメージが強いのですが、
ピルは月経困難症や子宮内膜症の治療薬としても使われていて、 その場合は保険が適用されます。

血栓症を起こすリスクが少し上がることが報告されていますが、 妊娠期間中と同程度の約2%です。
ピルが妊娠期間中とおなじ状態に身体を保つことを考えると、 当たり前のことであり、
そこを大きく取り上げるほどの異常な確率では全くありません。
(ただし、40歳を過ぎると血栓症のリスクが増加するので、ピルの投与を控えたほうが良いと言われています)

それよりも、メリットのほうがかなり大きいのです。
ピルにより、生理をコントロールすることで、 生理日を自分で決められるし、生理痛は軽くなります。
生理による出血が減って貧血が改善されたり、 ニキビや肌荒れの悩みが解消されたりする人も多くいます。
さらに、生理不順が改善したり、子宮内膜症の予防につながったり、
長期的に飲み続けることで卵巣がん、子宮体がん、大腸がんなどの予防につながることも分かっています。

生理の回数がぐっと減ることによって、女性のQOL(クオリティー・オブ・ライフ=暮らしの質)が上がったり、
仕事でパフォーマンスを上げやすくなったりするのです。

組織の管理者に是非知っておいてもらいたい事項です。

ピル使用によって不妊に繋がるなどと言われますが、 根拠のあるデータは何ひとつ無いのです。
現在、海外においては(一部日本の病院も)生理を4カ月に1回と定めてピルを処方する傾向にあるようです。
生理をコントロールして、自分の時間を有意義に使うことでQOLを高めているのですね。
(ピルには服用後最初の2~3カ月は副作用が出る場合があります。また、個人によって合う合わないがありますので、使用には必ず医師の診断を受けてください)

生理とパフォーマンス

女の転職typeさまが実施した会員向けWebアンケート (実施期間/2021年8月2日~8月18日 有効回答数/818名)によると、
就業先に「生理休暇」があるか聞いたところ、「ある」と回答したのは36.5%しかありませんでした。

そして、そのうち生理休暇の利用経験者は全体のわずか7%でした
一方で、82.2%の女性が生理やPMSが「仕事に影響する」と感じているのです。

また、生理休暇がある企業に勤めていて、生理休暇を利用したことがない人の理由は「使っている人が少ないため」が1番多くかったのです。

生理休暇制度は企業によって、日数や申請の仕方、有給かどうかなど、異なりますが、
周りの目を気にして取得出来ていない女性社員が多いようです。
もちろん制度を拡充すると同時に社内の、特に男性管理職の意識改革を行い、
女性社員の制度利用を促して行くことは大事ですが、女性活躍を推進する上では、
意識面と同時に、まずは身体的なジェンダー差を埋めていくことが重要なことだと思います。
(生物学的な性差=sex  に限りなく近い社会的な性差(ジェンダー)を表しています)

身体的なジェンダー差を埋めることで、 ようやく男女が本質的に平等なスタートラインに立つことが出来、
その上で文化や考え方を是正し、制度化していくことになるのではないかと思います。

身体的なジェンダー差を埋める意味からも、生理をコントロールし、
不快な症状に悩まされることなく、自分らしく仕事もプライベートも 充実した生活を送ってもらえれば
組織としても非常に喜ばしいことです。

そのためのピルなのです。

福利厚生としてのピル活用

しかしながら、先述のとおり、ピルは病気の治療に使う場合は保険適用ですが、
それ以外は自費診療となります。月数千円かかってしまうのです。

特に家庭を持った女性には、数千円が大きな出費になります。 毎月だと、結構な負担になるのです。
この、ピル処方について、企業が一部でも負担することが出来れば、
女性にとって非常に有効な制度となるのではないでしょうか。

人の目を気にして取りにくい生理休暇も計画立てて日程調整することが出来ることから、 取得しやすくなります。
毎月の生理用品代もバカになりませんが、それも抑えることが出来るようになります。

企業からしても、生理休暇付与日数が減ること、 生理休暇を有給とするよりも
コスト面が大きく下がることなど多いにメリットがあるのです。

ピルは残念ながら、日本では副作用や避妊のことばかりが話題になっています。
日本ではピルはイメージが悪く、服用を躊躇し大切なプライベートの時間を
生理の苦痛に費やしている女性が多いのが現状です。

ちなみに、国連の2019年発表では、日本のピルの服用率は2.9%と低く、
米国(13%)、イギリス(26.1%)、ドイツ(31.7%) などの欧米諸国と比べ、
日本はあきらかにピル後進国だとわかります。

ピルの服用によって、毎月の月経で辛い思いをしていた人が生理に伴う症状から改善され
日常生活の変化を実感することがしばしばです。
「生き地獄」だった生理痛が軽くなり、ストレスが減って
性格的に前向きになったという女性もたくさんいます。

また、ピルには避妊や月経のコントロール以外にも、
月経量の減少や貧血の改善 卵巣がん子宮がんの予防 子宮内膜症の改善 PMSの改善 など、
女性のQOLを向上させることが出来る良い作用(=副効用)もたくさんあります。

組織が手助けする姿勢を示すことで、
女性がピルを使用し、
自分自身で生理をコントロールし、
仕事のパフォーマンスを上げることで、
結果として企業の業績向上に繋がるのです。

是非、ピルについて、女性が普段から対応している症状について、
目を向け、対処を検討していってほしいと思います。

 

 

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大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。支店長として約10年 4ヶ店 勤務し、推進部地域創生室を経験後、大阪大学産学共創本部に身を置き、特任研究員として大学発ベンチャーの創生に携わる。 東京にてベンチャー参画しIPOを目指した後、大阪にて大学発遺伝子解析ベンチャーのCFOとし経営に参画した経験を持つ。 中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げており、企業支援の傍ら、セミナーなどを通じ起業志向大学生をサポートすることで新しい事業創出の一助を担うことをライフワークとしている。 現在はスピンアウトして起業、自ら手掛けたフェムテック事業の展開を図り、かねてから問題意識を持っていた女性の社会進出の一助を担うことを目標としている。

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