共感を得るためのツール
日本において、クラウドファンディングの登場で、共感を得ることが出来る範囲は、一気に広がったのではないでしょうか。
それまでは、自分が動ける範囲、つまり実体験参加型のツールが圧倒的な主流でありました。コンサートやイベントなどですね。
そのもうひとつ前は祭りなど神仏を中心とした集まりだったと思われます。
たとえば、「村のお寺の屋根改装に使いますから」と、寄付金を収めたのは、寄付型クラウドファンディングに該当するものです。この場合のリターンは芳名札に名前を書いてご祈祷してもらえる、といったものなどですね。
日本ではお金集め
日本でのクラウドファンディングは、震災を機に一気に広まった経緯もあり、当初は寄付のイメージが強く、そのせいか、今も お金集めというイメージから抜け切れていません。
多くの人が、お金集めの為にクラウドファンディングを!といった本を出版したり、公の場で堂々と言ったりしています。
お金集めという幻想が生み出したもの
「クラウドファンディング はお金集めである」といった日本の偏った考え方は、逆に良い意味でその後のツールに影響を与えることになりました。
クラウドファンディングを経験した(株)VALUの創業者である小川社長は、あらたな支援ツールとして「VALU」を開発しました。
クラウドファンディング は新規の商品やプロジェクト、イベントなどが対象で、支援されるタイミングはワンチャンスです。
起案者ではなく、商品などを評価して支援するのでわかりやすい反面 継続性に欠けます。
VALUは案件ではなく、人に共感を得て支援する仕組みです。ネット上で個人の株式を公開するイメージですね。
その人を応援するというのが、物やコトを応援するクラウドファンディングとは違うところです。その人がやること全てを応援出来るのが特徴です。
小川社長はVALUのことを「SNS+クラウドファンディング」と言っておられます。
ツールが発展したわけ
クラウドファンディング がマーケティングだという考えが広く周知されていれば、商品毎のマーケティング精度をさらに向上させる仕組みなどに目が行き、個人支援型ツールの新たな発展はなかったかも知れません。
お金集めと考えるからこそ、商品ではなく個人を支援するツール、個人価値の株式化という進化がなされたのだと思います。
VALUのジレンマ
VALUは画期的なツールですが、基軸通貨を仮想通貨にしたことで、本来の目的と異なる投機目的の支援者が入ってきたことで少し趣が変わったような気がします。
今後の可能性を考えれば 、仮想通貨導入は むしろ必要な事だったと思いますが、。
VALUは個人の価値を株に見立て、応援されるほど株の価値が上がるという仕組みです。納得性のある仕組みですね。
(VALUや後述するTimebankはFacebookやTwitterのフォロワー数などによって個人の価値が左右されます)
ところが、仮想通貨自体の価値が大きく上下することから、VALU自体が投機商品のように捉えられてしまいました。
VALUでは、いくつかの有名な事件が起こっています。仮想通貨の価値が大きく上がった時点で、自分の株を一気に売り抜くなどです。
当然、応援しようと買っていた人達は、持っていた株の価値が大きく下がる事になります。応援してくれた人達の期待を裏切る事になるのですが、これらは、クラウドファンディングをお金集めオンリーと考える人がいるのと同じで、VALUで儲けようと考える人がいるということです。
資金的な満足と共感を得る満足
自分の資金的利益の為にこういったツールを使う人もいれば、純粋な共感を得るために、役に立つという気持ちの為にツールを使う人もいます。
どちらが正しいとは言えません。それぞれに正論があるからです。
そして、これらのツールはそれぞれの思いに応じて別々の進化をしています。
日本にはまだ馴染みの薄い「ICO」は、ある意味クラウドファンディングより自由度が高く、企業がお金を集める為の、またマーケティングに加え企業価値やプロジェクト価値をも見れる便利な集客方法です。
企業の株式を市場に上場させる「IPO」に似ていますが、仮想通貨を使用するところが異なります。
また、クラウドファンディングは基本的にファンしか買わないが、「ICO」はファン以外にも「収益があがる」と、投資目的で買う人も入ってきます。
その方面のツールについては、今回はあまり触れることはしませんが、銀行に頼らない資金調達手段としては、今後メジャーとなるかもしれませんね。
共感を得る為のツール
一方で、共感や支援を目的としたツールも多く生まれています。
VALU以降に登場した多くの支援ツールは、仮想通貨を使用せず日本円で支援する形となっています。
VALUの大事故や仮想通貨の大事故が影響しているのでしょうか。投機的な部分が排除された形のツールが多く登場していますね。
(実際は、支援した個人の「価値」を売買することが可能であることから、投機的な一面は残っているのですが)
Timebankとは
VALUの後にもいくつかツールが出てきました。その中で異色を放ったとでも言うツールがTimebankです。
Timebankはその人の価値を時間として買う手法です。VALUの仮想通貨部分(個人の価値)を時間とお金に乗り換えたツールといっても良いかもしれません。
支援する側は、人の時間を買って使ったり、他の人に売ったり出来ます。
発行する人は、自分の時間を発行してお金を集めることが出来ます。
この人の時間は10秒いくらだから、1時間の講演してもらうのにいくらかかる。という具合ですが、時間が欲しい人が増えればその人の価値が上がり、単位時間当たりの価格も上がります。
株のように市場価値が急落したからといって紙切れになることはなく、そんな時にでも時間は単位通りに使えるのが特徴ですね。
Polkaとは
Polkaはフレンドファンディングと言われています。
身近な人からの支援・集金を得るための仕組みです。アプリとして登場して約1年。
基本的にURLを共有した身近な人だけがターゲットであるシステムで、不特定多数の人から共感を得るという仕組みとは少し異なるので、簡単に紹介だけしておきますが、便利で気軽なツールということは間違いないです。
アプリ上でプロフフィール写真とニックネームを決めるだけでOK.
あとはプロジェクトを決めたらクラウドファンディングとは比べ物にならない、簡単な作業だけで支援を得ることが出来ます。
また、拡散することも出来ますので、広く支援を得ることも可能です。
ただ、集金ツールという意味合いも強いのです。ここではあまり紹介致しませんが、クラウドファンディングもこれくらい簡易になれば、と個人的には思っています。
サブスクリプション型ツール
サブスクリプションとは、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式のことを言いますが、サブスクリプション型クラウドファンディングと言えるビジネスモデルのツールもどんどん増えています。
サブスクリプション型は、月々支援することで、無理なく自分のペースで進められることが特徴です。
クラウドファンディングのウィークポイントである、継続性を補完した形のツールですね。
CAMPFIREが「ファンクラブ」というクラウドファンディングを立ち上げていますが、そのビジネスモデルの先駆けとなるツールが『Patreon』です。
Patreonとは
Patreonはアメリカで始まった、ミュージシャンやウェブコミック作者向けのクラウドファンディングプラットフォームです。
基本的には月々の支援を行い(一定額の支援も可能)、価格によってリターンが異なるなどの特徴があります。
KickstarterやCAMPFIREのサブスクリプション型クラウドファンディングプラットフォームと異なるのは、基本的に新作の度にリセットすることや、製作者がキャンペーン成功後に一時金を求めることが出来たりと、購入型クラウドファンディング的な単発要素を色濃く残していることではないでしょうか。
サブスクリプション型ツールの発展
Patreonに続き、日本でも多くのサブスクリプション型支援ツールが登場しています。「サロン」「ファンティア」「Enty」「SESSION」といったプラットフォームです。
これらの決済はクレジットカードや銀行振込、コンビニ払いなどで、日本円で行われます。
ミュージシャン、イラストレーター、ゲーム制作、アート、ダンス といったジャンルが対象となっており、まさに「ファンクラブ」のようなイメージで、ファンは個別のアーティストに共感を得て、毎月彼らに対して支援することで応援をしています。
資金の使い道が明確かどうか
クラウドファンディングがこれらの支援ツールと異なるところは、資金使途が明確であるということです。
他のツールで集まった資金は、基本的には使い道は決めらていません。集めたアーティストや個人が自由に使うことが出来ます。
さらにクラウドファンディングは一度支援すれば継続性は無いですが、その他のツールには継続性があります。
支援したものの流動性があるかないかも重要なポイントです。
いくら価値がついたとしても、流動性に乏しければメリットを享受出来ないのです。
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