自社の商品販売
自社の商品をどうやって販売するかは、誰しもが悩むところだと思います。
実際に店舗を持って販売するには、多くのコストとリスクが伴います。
借り店舗で始めるにしても、設備資金や在庫資金、PR費用など、多くの費用が必要となり、それを借りるのも創業間もない事業者などには困難だと言わざるを得ません。
そこで、出店コストの安いネットショップでの販売を考える方々も多くおられます。
大手ECサイトに加入すると儲からない
その多くが、アマゾンや楽天などのECモールに出店しておられます。
たしかに、ECサイトで購入する場合、アマゾン、楽天で購入するという消費者は 日本ですら50%を超えます。多くの人が見にくるサイトですので魅力的なこともたしかです。
大手ECに加入することで、多くの顧客との接点が持てるようになります。
しかしながら、そこでは多くの似たような商品と比較されることになり、
価格競争に巻き込まれることは必然ですね。
多くの類似商品の中で、自社の商品を売っていく場合、本来必要のないコストなどが負担となってくるのです。
BtoB、BtoC から DtoCへ
ところが近年、特に小規模メーカーを中心にネット販売のビジネスモデルが変化しつつあるのです。
BtoB(BtoBtoC)、BtoCのモデルは、メーカーが卸業者を通じ小売業者に商品を届け、販売する形態であることはすでにご存知だと思います。
これらの形態では、中間マージンがかかってしまう。なので、ネット上での販売に移行するわけですが、先述のとおり ここでも価格競争に巻き込まれてしまいます。
そこで、出てきたのがDtoCという形態です。
DtoCとは
DtoCとは[Direct to Coutomer]のことで、製造業者が顧客に直接商品を買ってもらう形態です。
先述した通り、大手ECサイトでの販売では、必ず価格競争に巻き込まれることから、一部のメーカーは独自で顧客層を捉え、独自にネット上で販売することを始めています。
特徴としては、SNSで顧客と繋がり、顧客からの声を拾い上げ、顧客ニーズにマッチした商品を作り、販売することが挙げられます。
独自で顧客コミュニティーを形成し、大手ECサイトに頼らず、コミュニティー内のファン顧客に向けた販売を行うのです。
DtoCは新しいものではない
DtoCはインターネットやデジタルマーケティングの進展とともに注目されるようになってきた概念です。
つまり、既存の事業者がいままでの商圏でビジネスを考えていたが、その中からネットやデジタルを積極的に活用して商圏を広げたり変えたりする事業者が出てきたということです。
DtoCという言葉は消費者との関係性を表しています。
いままでは、企業が主体でモノやサービス、新しいトレンドを消費者に流し込んでいましたが、企業と消費者との関係性がフラットになったということだと考えられます。
DtoC事業者の特徴
DtoCブランドの特徴として、顧客との接点や商品の展開、流通など、既存の事業者にはなかった新しい価値を提案していることです。
また、スマホアプリ、モバイルアプリなど 簡単に顧客とつながるツールを導入し活用していることも特徴です。
さらに、既存の企業が行なっているような 既存のチャンネルでの売上やオペレーションに固執せず、マーケティングを軸とした成長やチャンネルシフトを行なっていることも特徴に挙げられます。
モノやサービスのコモディティ化が進んでいるなかで、マーケティングによる差別化とSNS等による顧客との繋がりを武器に、既存のビジネスから脱却することがDtoCビジネスなのです。
DtoCの事例
DtoCで成功した事例はすでにいくつもあります。
有名なのはアメリカの「Glossier(グロッシアー)」という企業です。
もともとファッション誌「VOGUE」のスタイリングアシスタントであった創業者のエミリーワイズ氏は、ファッションブログを運営し、その中でユーザーと意見を交わすうちに「ユーザーの意見を取り入れたコスメブランドを立ち上げたい」との思いから起業しました。
立ち上げたサービスサイトには、有名になった今も6割がブログ経由のユーザーだそうです。
ユーザーの意見を徹底的に取り入れ研究開発した商品を提供することで多くの顧客の支持を得ています。
商品の支持を得ることで、別途しかけたInstagramにも多くの人が集まるようになりました。
Glossierの商品に、インスタ映えするようなステッカーを付けたことで、そのステッカーを持った購入者が商品とともに写った写真をアップ、さらに顧客を呼ぶツールとなっているそうです。
また、子供服を手がける「ROCKETS OF AWESOME」や ヒゲ剃りを販売する「Dollar Shave Club」は、サブスプリクションモデルでDtoCを成功させています。
が、購入はECサイトのみで行うことを徹底しており、
DtoCとリアル店舗
DtoCでは、ECサイトでの販売が基本になりますが、DtoCでネット店舗を開設した事業者が、リアル店舗を開設しているケースも最近増えています。
アパレルブランドの「Bonobos(ボノボス)」は、買い物の苦痛を減らすことを目的としてDtoCを始めましたが、実店舗を「ガイドショップ」として商品を実体験する場所の提供を行っています
この場合 リアル店舗は不特定多数の顧客を対象にするのではなく、あくまでECサイトに来た顧客が、実際に商品を見て試す場所としての店舗です。 なので、購入はあくまでネット店舗からとなります。
「Bonobos」では、ECサイトで予約をした顧客がリアル店舗を訪問。
店員はあらかじめ来店が分かっている顧客のニーズを把握し対応するといったことを行なっています。
買わなければいけないという苦痛を取り除いて顧客に安心を与えているのです。
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リアル店舗が先か後か
最近、銀座の日本茶専門店『煎茶堂東京』さんがDtoCの前段階としてがリアル店舗を展開し、その1年間後にネット店舗を開設しました。
DtoCでは、顧客のニーズをSNSで拾い上げ、ニーズにあった商品を作り、ECサイトで販売するのが一般的でしたが、ここはまずはリアル店舗で茶葉だけでなく入れ方も異なる多くのお茶を提供し、実際に顧客のニーズをそこから拾い上げ、ニーズに沿った煎茶をネット店舗で提供する手法を取っています。
商品が顧客の味覚、嗅覚、などに大きく影響を受ける場合、SNSではニーズの把握に限界がありますが、リアル店舗にて情報を収取することでよりニーズに近い商品を製造できるのですね。
企業と顧客の関係性が変化している
DtoCビジネスが注目されている要因として、企業と顧客との関係性の変化があります。
大手企業、ブランド事業のイノベーションが進まない中で、顧客はすでに企業規模や広告量ではブランドへの安心感や安全感、信頼感を感じなくなってきています。
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デジタル化が進んでいくにつれ、企業側からも顧客と積極的に向き合い関係を維持しようとする経営者が出てきました。
デジタル化により、顧客との繋がりが大きく変化している状況で フロー型マーケティングに固執していると、企業やブランドはどんどん廃れていくと思われます。
従来非効率とされてきた買い手と繋がりながら行うビジネスは、デジタルによって改善されつつあります。
顧客との関係性という視点をビジネスに取り入れていくことが戦略として重要になっているのです。
DtoCの成功条件
SNSが普及してきたからこそ登場したDtoCですが、それゆえに今までのモデルと異なる成功条件があります。
まずは自社製品を客観的に知ることです。その上で、動画やSNSで情報収集するとともにSNSでコミュニティを作り出します。
コミュニティを強くしていくことで、消費者ニーズを知ることが可能になります。このコミュニティ参加者=顧客のニーズに合った商品を、彼ら向けに販売することになります。
つまり、SNSを通したコミュニティをいかに広げ、いかに強くするかが成功の鍵といえます。
クラウドファンディングの有効性
成功条件を並べてみると、クラウドファンディングがDtoCビジネスを行うにおいて、まさに有効なツールであることがわかります。
クラウドファンディング はマーケティングツールとして非常に優れています。
たとえばクラウドファンディング で何種類かのリターンを設定することにより、どういった年齢層、性別の人が どの商品(形状、色、使用など)を選ぶかが分かります。
実際に予約いただいてから商品を作ることが可能となりますし、届いた商品にSNSからコメントをもらうことで、新たな改良点が見つかるかも知れません。
クラウドファンディング によって、顧客のニーズを深掘りすることで、関係性を強化することが出来るのですね。
また、自社のコミュニティニーズを拾い出すことに加えて、他の新しいファンも捕まえることが出来、コミュニティを大きくすることも可能となります。
このようにクラウドファンディングとDtoCビジネスは非常に相性が良いのです。クラウドファンディングを上手く利用することも、DtoC成功の要件となると思います。
これからのDtoC
DtoCビジネスは非常に注目され、どんどんと広まっています。 通常販売に加え、サブスプリクションモデルなども多くなってきています。
クラウドファンディングやリアル店舗と組み合わせることで、顧客との接点が増え、顧客への情報提供と顧客からの情報提供が可能になります。
大手ECサイトから販売する手法と異なる新しいビジネスモデルによって、みなさんの事業を上手く際立たせていくことが出来ると思います。
大手企業、ブランドがプロダクトアウトで大きな利益を得るというモデルは終わりを迎えています。マーケットは売上ベースからクオリティベースに変わりつつあるのです。
顧客がひとつのモノやサービスにかける金額も増えてきている中、商品を大事に作り、顧客に大切に使ってもらうという姿勢がこれからのビジネスにとって重要なことではないかと思います。
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テイクオフパートナーズ代表
MBA
2級知財管理士
2級ファイナンシャルプランナニング技能士
西谷 佳之
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