MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

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葬祭ビジネスから戦略と価格設定を考えてみる

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1文って今の1500円?

先日、葬儀に関わる出来事があった為、ブログ更新が遅くなってしまいましたが、

実はその葬儀で 故人の棺に入れる『六文銭』(紙の擬似硬貨です)を 1つ 1,500円 で 6つ  買ってしまいました。

「三途の川をお渡りになるときに、お困りにならないよう」

と言われれば、頭ではわかっていても、

そんなこと無いとは思うけど、 もし本当にあっちの世界でそんなことでもあったら、

と不意に思ってしまい、購入に至りました。もちろん、断ることは出来ましたが。

納得して承諾したのですから、そのことに関して後悔をしているわけではないですが、
時間が経ってみると、自分が納得したメカニズムについて興味が湧いてきてしまったので、
少し葬祭ビジネスの戦略と価格設定について考えてみたいと思います。

葬儀社と病院

少し前には葬儀社と病院の癒着が公正取引委員会に指摘されていましたが、最近はあまり聞きませんね。

病院からは「どこかご存知の葬儀社はあられますか」と言われましたが、そもそも葬儀社なんて何社も知っている人は少ないでしょう。

否定すると、ではこの業者でと1社紹介を受けましたが、応諾するやいなや、すぐにそこからお迎えが来ました。

癒着かどうかはわかりませんが、後から考えれば、選択の余地は欲しかったと思いますが。

戦略としてみれば、選択肢を排除することは非常に有効な戦略ですから、まさに天晴れですね。

葬儀社のアンカリング

葬儀代については、みごとにアンカーを打ち込まれました。

「当社の会員様ではないですか?
一般の方は、大まかに2百万円くらいの費用です。しかし、会員様なら1百万円くらいになります。

今回は特別に、よろしければ20万円お支払いいただき、会員様となっていただきますと、会員価格でご対応致します。」
(わかりやすくするため、費用は実際とは異なります)

特別に とお得感をくすぐられたからと言うわけではないですが、損失20万円と利益1百万円、普通に考えて当然即決ですね。

さらに、利用可能性ヒューリスティック(他と比べるなどせず、利用しやすい情報だけで判断すること)を刺激するテクニックも使われていました。「今回は」「特別に」といった言葉で気を引く事がそれに当たります。

本来は一般的な基準と比較し、そもそも最初の価格設定2百万円が妥当なのかどうか 判断する必要があるのです。

しかしここでも、比較する対象を与えられていない(他の業者を紹介されていない)ので判断できません。見事な戦略です。

そして、この2百万円というアンカーは、金額交渉において、後々まで響いてくるのですね。

ネゴシエイトという観点から言えば、他社の金額を少しでも知っていれば、逆にアンカーを打ち返せたかも知れませんので、そこは惨敗でした 笑

サンクコストはお金だけではない

特に葬儀の場合、時間が全くありません。葬儀の準備や親族への連絡など行うべきことが山ほどある中、ここでの価値はお金より時間といっても過言ではないと思います。

当然先ほどの葬儀代の提案を断って、他の葬儀社を探しても良いのですが、そうすると今までかかった時間がサンクコスト(すでに支出され、回収できない費用)となります。

この状況下での時間はすごく価値がありますから、疑問を持っていたとしても、ここで他の葬儀社を選択する人は少ないと推測されますね。

葬儀社価格の粗利益率はどれくらいなのか

おそらく葬儀社での販売価格は、通常の販売価格からすれば高いのだと思います。

材料費がこれくらいだから、販売価格はこれくらいだろうという推測はここでは成り立ちません。

その代わり、少しびっくりしたのですが、割引率が非常に大きいんです。
一般的な物販の場合、通常、1割とか2割・・3割は厳しいでしょうか。

一般的な物販においては、よっぽどの粗利益率でないとなかなかそれ以上は引けないと思いますが、
葬儀社は違います。もっと割引してくれます。ただし、交渉してというよりも、自らすすんで。

おまけに、何も交渉していないのに、普通に5割以上安くしてくれたりもするのです。
(10万円以上の値引きも何度かありました。)

これもアンカリングを利用した戦略だと思えば納得出来ますね。

費用と効果のバランス

普通に考えたら、そんなに割引出来る商品(粗利益率の非常に高い商品)は有り得ないですよね。

すべての商品が本当はすごく高いのではないかと、多くの利用者が感じているのだと思います。

では、何故「高すぎる」と声を上げないか。

まず一つは、アンカリング効果ですね。最初の価格が高くて、割引価格でグンと下がれば
人間心理として、非常に得をしたという気持ちが強くなることが要因です。

もう一つは、費用に対しての効果が大きいからです。
ここでいう効果とは、費用を支払うことで

・無事に葬儀が進んでいくこと
・故人に対してプラスαの供養をしたという思えること

などです。

ほとんどの人が初めての葬儀で、作法すらわからない中、葬儀社の方々は丁寧に一から教えてくれるのです。
決して嫌な顔せず。

感謝というか感動した人も多いのではないでしょうか
(私もそのひとりですが)

多少価格が高くても、こういった費用という損失を上回るメリットがあれば、 価格は高いとは感じないのですね。

物販ではない葬儀ビジネス

そして、葬儀ビジネスは物販だけで成り立っているのではありません。
どちらかといえばサービス業です。

一般的に言われている通り、顧客に対して優越的地位にあるビジネスですが、
やることは多種多様で拘束時間も長くて不規則、決して楽なビジネスではありません。

むしろ、丁寧に熱心に対応くださった葬儀社の方々には頭の下がる思いです。

葬儀社はホスピタリティが求められる職業であり、単なる物販企業ではありません。

利用する側は、ホスピタリティの対価を、物を通じて支払っているということに他ならず、単に物を購入しているのではありません。

そう考えれば、受けたサービスの付加価値分 通常より高くても当たり前なのかも知れません。

ブルーオーシャン戦略

葬儀社が優越的地位に位置するに至ったことは、立派な戦略によるものだと考えられます。

誰もが出来ない(やろうとしなかった)事業のある市場に進出し、バリューチェーンを垂直統合していきました。

葬儀から会食、仏壇まで一社で手掛けるところが多いため、顧客に対して優越的になりやすいのですね。

今でこそ、参入企業が多くなり、市場がレッドオーシャン化してきていますが、
他業界の大手参入は難しい業界であり、参入障壁をクリアして
ブルーオーシャンに事業を立地したのは立派な戦略によるものです。

参入障壁

葬儀業は特に認可や登録の必要がないことから参入障壁は低いと思われますが、
実は葬儀業界への参入障壁は、非常に高い障壁です。

他国とは違い、日本においては特に強い、意識の問題だからです。

過去から日本人は「死」に関わるビジネスに対して否定的な一面を持っていました。

ホテル業界は、葬儀をホテルでは行ないませんでしたが、これは葬儀を行った場所で 祝い事を行いたくないといった顧客からの依頼によるところが大きかったそうです。
石を扱う業者が、いくら儲かっても墓石には手を出さないという業者が多かったのも そういった理由からです。

日本人の2面性

この場合の参入障壁について考えてみます。

日本人は科学信仰が非常に強いと言われています。

それが一因でもありますが、特にビジネスでは、スピリチュアルな面を受入れる企業は非常に少ないのです。
禅などは、先んじて海外企業がビジネスに取入れているにもかかわらず
日本での企業導入はあまり進んでいません。

しかし、神社や寺への参拝や、初詣、墓参りもきちんと行うという一面は
むしろ他国より持っているのではないでしょうか。

にもかかわらず、ビジネスでは特に「死」に関わることを避ける傾向にあります。

日本人が信心深いからなおさらなのかも知れませんが、だからこそ企業として市場参入するのは大変だったと推測できます。
そして、それを乗り越えたからこそ、優位な立場でビジネス展開が可能となったのですね。

ただ、現在は参入業者も増え、業者間での競争も厳しいようです。

科学信仰とスピリチュアル

実は葬儀業は、インドにおいては、限られた階級の人しかつけない、非常に崇高な職業です。

日本では、業界の社会的立場はそこまで強くありません。
(認可制、届出制といった制度が無く、制度上は誰でも出来るようになっています)

そのような状況である要因の一旦は、先述の日本人の考え方にあると思われます。

葬儀業界に限らず、他業界においても、同様のケースはみられます。

日本においては科学信仰とスピリチュアルのビジネスにおける共存が今後の課題なのではないでしょうか。

スピリチュアルな部分も一つの可能性として、ビジネスを大きく捉えることが必要だと感じます。

そのために目線を広げた提案を行っていきたいと思います。

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西谷 佳之
大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。約10年 4ヶ店の銀行支店長経験後リレーション推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行ではほぼ全ての期間で法人取引を担当した経験や、支店長として着任したすべての店舗を業績表彰店に導いた手法とMBAの知識をもとに、個社別のコンサルタントや経営関連講演を行うことで事業サポートを行っている。 銀行の枠組みを超えた企業サポート手法のひとつとしてクラウドファンディングの可能性に魅力を感じ、クラウドファンディングを利用した事業サポートに注力している。 また、起業志向学生のサポーターとして大学発ベンチャー創生にも携わっている。

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