MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

クラウドファンディング 地域創生

新しい地域創生手段としてのガバメントクラウドファンディング

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今回は新たな地域創生手段として、またレッドオーシャン状態である購入型クラウドファンディングのプラットフォーム業者からは ある程度まとまった金額が集まる新たな収益源として注目されている「ガバメントクラウドファンディング」についてお話ししたいと思います。

ふるさと納税の問題点

最近、ふるさと納税に対する批判が高まってきているのはご存知だと思います。
そもそも「受益者負担の原則」という、行政サービスを受ける住民が税を負担する という原則があります。
その観点からみれば、ふるさと納税制度自体がすでに原則を逸脱しているのですが、それ以上に返礼品競争が過熱化しすぎていることが問題視されています。

大都市圏が不利なふるさと納税

総務省によると2015年度のふるさと納税寄付総額1,653億円のうち、4割以上である 675億円が返戻品関連に使われたとのことです。

また、ふるさと納税の収支(寄付受入額と他自治体への税収流出額の差)で赤字になっている自治体は全国 1,741市区町村のうち 525を超えるというデータもあります。その大半が大都市(横浜市 28億の赤字 名古屋市 17億の赤字 など)なのです。

そもそものふるさと納税

2008年の税制改正により導入されたふるさと納税は寄付税制の一種で、もともとは返礼品とセットではない【経済的利益の無償の提供】に位置付けられていました。自己負担 2,000円を除く全額が所得税・住民税からの控除対象(総所得額の 40%が上限)である寄付控除+特別控除が適用される制度でした。

ところが、各自治体は他地区からの寄付金取り込みに注力し、地場産業発展という名のもと、返礼品を付与した競争に発展していったのです。

返礼品の費用は実は別枠

行政会計上、ふるさと納税による寄付金と返戻品分の費用は別枠として扱われています。

ふるさと納税による寄付金は歳入として扱われますが、各自治体は別予算を立てて返礼品分の費用を捻出し、歳出としています。
当初想定より人気が出た場合などは、補正予算を組んで返礼品分費用に充当しています。
費用には当然、発送費用なども含まれます。

なりふり構わぬ現状を踏まえ、総務省は返礼品を寄付額の3割以下に抑えるよう 2017年4月に通知を出したのです。

ふるさと投資

2011年の地方自治法施行令の改正によって、第三者が寄付金などを自治体に取って代わって募ることが可能となり、行政が主体となるクラウドファンディングの促進が政府主導で始まりました。

これらのクラウドファンディングは投資型であったことから「ふるさと投資」と言われています。

2013年、鎌倉市が自治体で初めてクラウドファンディングを活用したのを皮切りに、ふるさと投資は普及していきました。
ふるさと投資は必ずしも自治体が主体というわけではなく、その他の団体や地域金融機関などが行っている場合もあります。

ふるさと納税とふるさと投資

ふるさと投資はふるさと納税の投資版と言われていますが、両者の違いは以下の通りです。

資金の出し手からみると、ふるさと納税は好きな自治体に寄付ができ、豪華な返戻金がもらえる反面、自己負担があり、税控除を受けるのにひと手間がかかります。また、大きな括りでの支援なので、期待していない事業への寄付となる可能性もあります。

一方で、ふるさと投資はより具体的なプロジェクトに投資ができ、出資額以上の利益も期待できる反面、税控除は無く、出資額以上の利益には源泉所得税がかかります。元本保証型投資ではないので、事業の進捗次第では元本割れのリスクもあるといったデメリットを含みます。

自治体の苦悩

ふるさと投資は単なる投資型クラウドファンディングであり、運用が長期に渡ることなどもあり 思うようには普及していません。

並行して自治体においても、クラウドファンディングによる資金調達の検討は以前よりなされていたものの、ふるさと納税で資金を集めれば寄付者に税額控除メリットが発生するが、購入型のクラウドファンディングやふるさと投資では税額控除メリットは発生しない。

どうせ自治体が資金を一般から集めるのならば、ふるさと納税で資金を集めたほうが資金の出し手にとっても良いのではないかという考えも多く、自治体のクラウドファンディングは思うように進みませんでした。

ふるさと納税とガバメントクラウドファンディング

そこで、ふるさと納税の仕組みを利用したクラウドファンディングが登場しました。

いわゆるガバメントクラウドファンディングです。

これは、自治体主体の寄付型クラウドファンディングに限られますが、寄付することでふるさと納税と同じように所得税・住民税からの控除メリットが受け取れるだけでなく、ある程度の返礼品を付けることも出来る。
自治体にとっては、特定のプロジェクトに対して共感を得た人に支援してもらえるというメリットがあります。

自治体であるメリットを最大限に生かしたクラウドファンディングですね。

ガバメントクラウドファンディングの可能性

ガバメントクラウドファンディングは、自治体が自らのプロジェクトに対し、他の地域からも寄付者を募ることができ、予算よりも多額な資金(寄付金)をつぎ込んでプロジェクトを実行出来る可能性が生まれます。

なにより自治体としてふるさと納税よりも資金が集めやすい。
導入までには(自治体によって差はありますが)議会の承認や予算の計上などの手続きを経る必要があるなど、すぐに動きづらい部分もありますが、今後自治体での導入が期待され、地域貢献に寄与するものと思われます。

ガバメントクラウドファンディングの問題点

ふるさと納税が過熱化してしまった中、ガバメントクラウドファンディングは新たな自治体の資金調達手段として非常に期待されますが、問題も含んでいます。

クラウドファンディングをご存知の方はよくお分かりだと思いますが、資金集めのポイントはプロジェクトに対する「共感」です。
AとBのプロジェクトがあった場合、Aは緊急性が高いプロジェクト、Bは重要性がそこまで無いプロジェクトとした場合でも、県外の人には緊急度合いはわかりません。
その結果、県外の寄付者は単純にAとBのうち共感を持ったプロジェクトに寄付をすることになります。

必ずしも行政の計画や優先度合いに沿った資金の集まり方はしないのです。つまり、県外の人には単にプロジェクトの人気投票となってしまう可能性があるのです。

ガバメントクラウドファンディングがふるさと納税を追随するかも

また、ガバメントクラウドファンディングのプロジェクトが増えてきた場合、ふるさと納税と同じく、寄付金の奪い合いになる可能性があります。
つまり、各自治体のプロジェクトが本当に必要なものではなく、面白いものに傾倒していくかも知れないのです。

ふるさと納税の返礼品も、過熱化が過ぎ、地元の名産などではなく、転売性の高い 「iPad 」などの電化製品が出てきたことがありました。言語道断ですね。

自治体が行う公共性の高いプロジェクトだからこそ寄付金控除があるのですから、そのあたりを見失わないようにして、本来の目的通りに使ってもらえれば、ガバメントクラウドファンディングは地域創生に大きく役立つでしょう。

 

 

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西谷 佳之
大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。約10年 4ヶ店の銀行支店長経験後リレーション推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行ではほぼ全ての期間で法人取引を担当した経験や、支店長として着任したすべての店舗を業績表彰店に導いた手法とMBAの知識をもとに、個社別のコンサルタントや経営関連講演を行うことで事業サポートを行っている。 銀行の枠組みを超えた企業サポート手法のひとつとしてクラウドファンディングの可能性に魅力を感じ、クラウドファンディングを利用した事業サポートに注力している。 また、起業志向学生のサポーターとして大学発ベンチャー創生にも携わっている。

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