MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

クラウドファンディング 創業 資金調達

本当に創業期のクラウドファンディングは有効なのか ③

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業種別にクラウドファンディングでの調達を考えてみる

①回、②回と、リターンを商品とした製造業の資金調達の観点からクラウドファンディングを見てきましたが、その他の観点からではどうでしょうか。

飲食店が行うクラウドファンディング

飲食店が新しく店舗をオープンするなどの場合を考えてみます。クラウドファンディングで設備資金を調達できれば、そのあとは料理などをいくらでも作ることが出来ます。リターンを来店時のチケットなどにしておけば、一気にリターン商品を作る必要はありませんから、最初に必要なのは材料費さえ賄えれば、理論上はクラウドファンディングの資金調達で事業が進んで行くことになります。

一気にリターンのお客さんが来ないように工夫すれば、他のお客さんの売上も入ってきますので資金も回っていく可能性があります。(製造業で製造設備資金を調達する場合も同じことが言えるかも知れません)

しかし、これらは今までにも述べていますが、その他の固定費を賄えることが前提条件です。普通は飲食店の場所を固定しますが、場所を決めるとコストが跳ね上がります。調達している最中も費用の発生は待ってくれません。また、来店客をあてにした前売りチケットの販売には限度があります。来れる人が限られているからです。確かに遠くても行ってみたいと思わせる画期的な企画であればそれも可能だと思います。実際に人気が出るかどうかは、テクニックで確率こそ上げれますが、最終的にはやってみないとわからない部分もあるのです。

やはり全国をターゲットとしたい

商品販売型が成功しやすい理由は全国をターゲットに出来るからです。商品は手元に届けれますので全国のユーザーを対象に資金集め出来ますが、来店誘致型の場合はどうしても対象地域が狭まり、資金が集まりにくくなってしまいます。それならばと、別途 全国発送用可能な商品を作るとすれば、これまでに話をしてきましたメーカーの場合と同じ問題を含むことになります。飲食店の設備資金調達に加え、リターン商品の製造費用も調達となれば やはり別途収入か手元資金が無いと、創業期のクラウドファンディング調達のみでは難しいと言わざるを得ません。

実演者などが行うクラウドファンディング

実演者(いわゆる演奏家、噺家、演劇、歌手など)が行うクラウドファンディングは商品販売とは少し異なる場合があります。商品の販売目的の場合、材料費などのコストも調達資金に含む必要がありますが、実演者が実演する場合は材料費のようなコストはかかりませんので、調達資金使途の内容は商品販売とは少し変わるのです。(その他の費用や固定費等はどちらの場合もかかりますが)

サイトでは、無名の歌手がクラウドファンディングで資金調達してファーストコンサートを開くといったプロジェクトが見受けられます。無名新人の歌手なれど、他のライブハウスなどに出演し、少しでも出演料を貰える状態ならば、クラウドファンディングで資金を集められなくても事業は続けていけます。むしろクラウドファンディングを行うことで知名度が上がり、ファン層の特定なども出来るので非常に有効だと思います。資金調達以外のメリットが非常に大きいですね。

直接の収入源に対するクラウドファンディング

しかし、資金調達の観点から見れば、他の収入手段があるから、ある程度のリスクを許容できるということに尽きます。実演家は収入源が自らのスキルである場合が多く、著作財産権の使い方なども含め、いろいろな収入源を確保できる特殊な業種だと思います。直接の収入源に対し資金投下が不要な業種である(スキル習得などに対する自らの資金投下はすでに行われているものとします)実演家と、直接の収入源である商品を作るために材料費等、直接資金投下しなければならない製造業等は立場が異なります。

直接の収入源に対して投下する資金をクラウドファンディングで集めることは、調達金額が流動的であることから、リスクを含んでいることがわかると思います。なので、調達に失敗したり、資金計画を間違うと、カバーできる売上や資金が無い創業期の場合、一気に事業停止となってしまう可能性があるので、あまりお勧めが出来ないということです。

All or Nothing と All In

クラウドファンディングの資金調達方法については、All or Nothing方式と、All In方式があります。

All or Nothing方式:期間内に目標金額に達してなければ、集まった資金を受取れない方式

All In方式:期間内に目標金額に達していなくても、集まった金額を受取れる方式

クラウドファンディングは必要な資金を共感を得て集め実行するのが趣旨ですから、本来はAll or Nothing方式で調達するのが妥当だと思います。しかし、現状は集まった資金だけを利用するAll In方式が増加しています。マーケティングなどを目的とした場合は必ずしも全額集める必要が無いことや、確実に資金を手にしたいというニーズが高まってきていること、また購入型クラウドファンディング業者が多く設立され競争が激しくなってきていることなども要因だと思います。

不足資金をどう手当するか

しかし、資金調達という面に焦点を当てると、All In方式の場合、必要資金が集まらなかった場合の不足資金はどうするのかが早急な課題となります。やはり手元資金が必要なのです。必要額が集まらない場合、別手立てがなければ事業に影響を及ぼします。製造設備資金を調達するとした場合など、集まらないと事業そのものが開始できません。なので、創業期のクラウドファンディングのみでの資金調達には否定的にならざるを得ないのです。さらに、調達方式はAll In方式ではなく、All or Nothing方式とし、必要資金が必ず集められた場合にプロジェクトをするのが良いのかもしれません。

創業期のクラウドファンディングに必要なこと

これまでお話ししてきた、資金調達計画のことや、税金などのキャッシュアウトに注意することに加え、

・集めた資金を何に使うか、出口も含め良く考えること

・リターンの配布時期をばらけさせることで、資金繰り負担を軽減させてみる

・直接の収入源に対する資金調達は自らの資金余力と合わせよく検討すること

・調達方式も検討材料の一つであり、安易に決めないこと

などが挙げられます。もちろん、手元に資金があるか、別途調達手段があるか といったことが創業時に必要であることも付け加えておきます。

次回では購入型クラウドファンディングのトラブルと利用の仕方についてお話ししたいと思います。

 

 

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西谷 佳之
大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。約10年 4ヶ店の銀行支店長経験後リレーション推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行ではほぼ全ての期間で法人取引を担当した経験や、支店長として着任したすべての店舗を業績表彰店に導いた手法とMBAの知識をもとに、個社別のコンサルタントや経営関連講演を行うことで事業サポートを行っている。 銀行の枠組みを超えた企業サポート手法のひとつとしてクラウドファンディングの可能性に魅力を感じ、クラウドファンディングを利用した事業サポートに注力している。 また、起業志向学生のサポーターとして大学発ベンチャー創生にも携わっている。

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