そもそも交渉にジェンダー差はあるのか
多くの女性が「交渉が苦手だ」と思っているようです。
本当にそうなのでしょうか。
ハーバード大学らが行った研究があります。
一流ビジネススクールの新卒MBAの男女について、入社時の給与交渉の結果を調べた実験です。
交渉力に差がなければ、彼らの初任給(交渉のすえ得られた金額)に大きな差はないはずです。
結果は非常に興味深いものでした。
彼らが必要とされる、比較的入社しやすい企業では男女の給与差はなかったが、
比較的入社しにくい企業では、男性が勝ち取った額が、女性より1万ドル高かったのです。
これは、競争環境が入った場合においては、男性の方がパフォーマンスを発揮するということを意味します。
たしかに、以前『女性が知っておくべき「お金」の話』のブログでもお伝えしましたが、
一般的に男性は競争環境に置かれるほどリスクを取る傾向にあり、女性はその逆だと言われています。
ご参考まで
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女性起業家が知っておくべき「お金」のはなし ①
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しかし、だからといって男性のほうが交渉に向いていると言えるのでしょうか。
女性が得意な交渉
実は、別の研究結果があります。
ハーバード大学が行った別の研究では、自分の報酬の交渉する場合と、候補者のメンターとして交渉する場合を比較しました。
すると、男性では変化がなかったのですが、女性ではメンターとして交渉したほうが18%も高い金額を得ていたのです。
つまり、女性はどちらかというと他人や組織のために交渉するほうが向いているのだと言えますね。
これら2つの研究から導き出されることは、それぞれ得意不得意はあれど、交渉自体に向き不向きはないということです。
この結果はあくまでも一般的にという意味であり、個々の能力差も当然あります。
交渉に対する勘違い
では、多くの女性が「交渉が苦手」と思ってしまうのはどうしてでしょうか。
それは、おそらく交渉について勘違いをしているからに過ぎないと思います。
日本では交渉は【相手に対して自分の意見を押し通すもの】【相手との綱引きのようなもの】と思われがちです。
そもそも、この間違った考え方が 競争環境を苦手としている女性に『交渉=競争』と思わせ「交渉が苦手」と思わせる要因なのです。
では、交渉とは本来どんなものなのでしょうか。
ピザのお話
ピザを分ける交渉の場合、納得できる分け方はどのようなものでしょううか。
たとえば4人いた場合、交渉でパイを最終的に4等分することが着地点だと思いますか?
4等分するのが平等なのでしょうか。
実はまったく平等ではないですよね。
なぜなら、4人の状況はそれぞれ違うのです。お腹が減っている人もいれば、サラミが嫌いな人もいる。
4人それぞれが欲しい大きさも内容も異なるのです。
交渉とは、それぞれの状況を理解し、最終的にそれぞれが納得いく形に収めることなのです。
決して奪い合いではないのです。
あの有名なクイズのお話
もうひとつ、交渉について大きく誤解されている ことがあります。
あの有名なクイズで考えてみましょう。
いわゆるこれですね。
「4本の線を引いてすべての点を一筆書きで繋げてください」というクイズですね。
多くの人は下の図のようなに考えますが、上手くいきません。
さて、答えはどうだったでしょうか。
覚えておられますか?
これが答えですね。
ポイントは必ずしも点の内側で完結しないことですね。
与えられた(と思われる)スペースの外側に目を向けることが必要なのです。
一筆書きという言葉によって、思い込みが働き9つの点が暗に示す境界線を越えずにすべての点を結ぼうとしてしまいます。
「交渉」においても同じような思い込みが働いています。
交渉に対する誤解
つまり、交渉は表面に出ている条件だけで行うものではないのです。
まず、その前提を捨てなければいけません。
先ほどのピザの話で言いますと、ピザの大きさは決まっていないということです。
最初からピザの大きさを決めてしまっているから、奪い合いになるのですね。
ピザの大きさは変わらないものと決め込んでしまっていると、自分にも相手にもメリットをもたらしたはずの、多数の総合的なトレード・オフは永遠に発見できないでしょう。
交渉は
・奪い合いではない
・交渉におけるパイの大きさは決まっていない
ということを理解しておいてください。
本当の交渉は相手と自分両方にメリットのある、長い期間相手と友好的な関係であるための、統合的な合意内容を生み出すための行為なのです。
競争ではなく、協創に近いですね。自分のためだけでなく相手のために話し合うということは、むしろ女性に向いているのではないでしょうか。
トレードオフを発見するということ
では、お互いのメリットになるトレードオフを創り出すためにはどうしたらよいのでしょう。
次の問題を考えてみてください。
二人の姉妹がオレンジを欲しがっていたのですが、オレンジは1個しかありませんでした。
妥協案は?
どうすれば二人が満足するトレードオフとなるでしょうか。
交渉に対する誤解を解かない場合、おそらく単に2等分して半分ずつ分けるということになります。
もちろんそれでよい場合もあるでしょう。
しかし、この姉妹の場合は違いました。
妹はジュース(実)を、姉は皮を手にいれることで、二人とも非常に満足したのです。
なぜなら、
妹はジュースを飲みたかった、
姉はオレンジの皮を使ってケーキを焼きたかった
からなのです。
交渉に対する誤解を解いた場合、オレンジを中身と外見に分けることも見えてきます。
全員が皮の中に甘い身が入っているオレンジを欲しいわけではないのです。
つまり互いのメリットとなるトレードオフを発見するためには、交渉に対する誤解を解くことと、相手が何を欲しているか、本当の利害はどこにあるかの情報が必要なのです。
そして、戦略的には、相手の情報をより知っていることで、きちんと自分にも(相手にも)好ましいトレードオフが創り出せるのです。
では、好ましいトレードオフを生み出すためにはどうしたらよいのでしょうか。
互いのメリットとなる統合的な合意内容を生み出すためには5つのポイントがあります。
トレードオフを発見するための5つのポイント
① 信頼関係を構築し情報を共有する
特に事業においての交渉は見知らぬ相手と行うことが多いですね。
交渉に対する誤解もあって、お互いが相手側を信頼せず、
しかし、交渉の目的がお互いの利益、
まず、全体の利益がどれだけ発掘できるかを考えることが重要で、
交渉の前に相手との信頼関係を築き、情報を共有することは、
② たくさん質問する
交渉多くの人達に誤解されている事もあり、
また、交渉に不慣れなため、
こういった状況にあっても、単純なことですが、
たとえ相手が質問に答えてくれなくても情報は引き出せます。
③ ある程度の情報を与える
相手との信頼関係が成立していない場合や、
交渉における行動では、
なので、こちらがある程度情報を与えることは、
ちょっとした知恵を与えることで、
④ 同時に複数のオファーをする
多くの交渉において、
そして、
多くのひとが、交渉の席についたら、
そして、交渉が上手くいかないことになってしまうのです。
そのような、
複数と言っても、全くバラバラなオファーではなく、時系列、量、
⑤ 事後解決的解決を探す
多くの交渉が、無知や信頼がない事、
協力すればパイが大きくなるのに、
たしかに、多くの人が交渉に対して誤解をしている状況の中で、
そのような状況で、皆さんがすべきことは、
交渉が終わったあと、
新たな落とし所による利益は按分するなどの取り決めがあっても良
交渉が不完全に終わったとしても、
競争から生まれないトレードオフ
以上の5つの手段は、

そして、
さらに、相手との関係が長く続く交渉です。
交渉に対する考え方を変えて、しかるべき手段を用いれば、

しかし、世界的に日本人は交渉が下手と言われています。

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※このブログでは「女性」という言葉を使っていますが、
テイクオフパートナーズ代表
MBA
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2級ファイナンシャルプランナニング技能士
西谷 佳之
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