※本ブログは2020年5月時点のものです
コロナウイルス感染症の影響で、経済は大きなダメージを受けています。
事業者の収入が入ってこなくなり、個人の所得にも影響を与えています。
中小企業・個人の方々への影響は、リーマンショックの時よりも大きいのではないでしょうか。
このような状況のなか、ボディーブローのように効いてくるのは借入の返済です。
事業借入はもちろんのこと、個人のローン返済についても毎日の生活に大きくのしかかってきます。
このような時にどのように対応すれば良いか 前半は事業者向け、後半は個人向けにまとめてみました。
事業者が一番すべきこと
借入を行なっている事業者が、返済がしんどくなってきた時に考えることは
追加の借入をして資金繰りを安定させる↓
というのが一番多いと思います。
これが叶わない場合、
なんとか返し続けていく↓
(その結果資金繰りがタイトとなり、支払先などにしわ寄せし、営業上に信用を失う結果にもなります)
ということになります。
今後の調達の可能性も考え、出来るだけ頑張る事業者は多いです。
それでもしんどくなってきた場合、第三の選択肢として
延滞する
(今の条件のまま支払わない)ということになるのが一般的な傾向ではないかと思います。
しかし、「返済が厳しいな」と思った時に一番最初にすべきことは
銀行に相談する
ということです。
つまり、銀行にてリスケ(借入の条件変更)を行うことです。
なんだ、そんなことかと思われるかもしれませんが、すぐに相談に行く事業者は本当に少ないのです。
・銀行に相談したら、借入の返済を迫られる
・銀行に相談したら、今後の借入が出来なくなる
・銀行に相談したら、預金との相殺を迫られる
などと思っておられる事業者の方が非常に多いのです。
金融円滑化法
銀行に返済の相談に行くことは、実はそんなにハードルは高くないのです。
なぜなら、金融円滑化法という法律が制定されたからなのです。
「金融円滑化法」は平成21年12月4日に立法化された時限立法で、
【中小企業や住宅ローンの借り手が返済負担の軽減を金融機関に申し入れた際に、金融機関が融資先に対する返済猶予や金利減免などのリスケによって、返済負担の軽減を図るように努めることを要請】
する法律です。
つまり、銀行は返済が厳しくなってきた事業者に対して、自らのコンサル機能も発揮し出来る限り対応することを金融庁から依頼されているのです。
なので、銀行は決して無下に断りませんし、貸し剥がしなどもしません。
(もしそのような対応をされた場合は、金融庁などの相談窓口に連絡すると良いでしょう。)
ちなみに、この法律は平成25年3月末に期限を迎えています。
しかし、それ以降も金融庁は銀行からの報告を求めていました。
つまり実質的には継続していたと言ってもよいのです。
金融庁が公表している「貸付条件の変更等の状況について」
(平成30年4月から平成31年3月末までの実績)
によると、債務者が中小企業者のの場合、
申込件数740,452件
に対して、
実行件数が721,814件
実行率は97.5%と異常に高い数値となっていました。
![](http://consultant-top.com/wp-content/uploads/2018/03/a3a62cd5992e3c165e75c58902a5dd34.jpg)
一旦平成31年に金融庁への報告は終わっていたのですが、また、今回のコロナウイルス感染症の影響を受け、金融庁は金融円滑化法の仕組みを改めて復活させる対応を取っています。
リスケについて
銀行でのリスケ(条件変更)は受け入れられやすい状況となっていますが、事業者の思いはどうなのでしょうか。
「金融円滑化法といっても、リスケした以上は新規融資は難しいのではないか」と思われると思います。
私も当時(リスケして資金繰りが助かっても割引すら出来なければ企業は結局倒産するのではないか)と疑問を持ちました。
しかし、金融庁は金融円滑化法施行の時に
・金融円滑化法の制度上条件変更した債権は、銀行上の条件変更債権に該当しない
・金融円滑化法上で条件変更した先についても、通常の運転資金などについては対応すべき
といったことを述べています。
つまり、新規調達の道が全く閉ざされてしまうわけではないのですね。
また、「自社がリスケしたことが商売に影響するのではないか」という懸念を持たれると思います。
しかし、銀行のプロパー融資の場合、銀行同士の横のつながりで、自社のリスケ情報が漏れるということは無いですし、
ましてや一般の取引先にそのような情報が行くことはありません。
たしかに、保証協会保証付融資や日本政策金融公庫については、情報を共有しますので、
それらの申込をメイン行以外の他行で行なった場合、その銀行にはリスケの情報はいってしまいます。
ただ現在、保証協会保証付融資や日本政策金融公庫融資は、既存融資の借換えも積極的に行なっています。
これらをうまく使えば、リスケ債権ではなく新規正常債権として扱われることから、リスケ債権として他行にも伝わることは無くなります。
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事業計画の作成
銀行にリスケをお願いすると、事業計画書の提出を求められます。
(保証協会や日本政策金融公庫も同じです)
中期の事業計画を作成し、1年ごとに計画と実績を比べていくことが一般的です。
特に2年目、3年目の計画が実績と大きく乖離していけば、新規調達に影響してしまうことも十分に考えられます。
なので、大きく飛躍する計画よりも、出来るだけ考えられる実態に沿った計画を作っていくことが望ましいです。
想定外の事態(たとえば今回のコロナウイルス のような)が起こった場合は、改めて計画の策定を行なっても構いません。
このような事態は誰も事前に想定できないことで、それは銀行もわかっているからです。
なので、現時点で想定しうる見込みを、その根拠を明確にしつつ、堅実に計画を作ることをお勧めします。
(計画策定については、金融円滑化法において、銀行が補助・代理作成をするように明示されていますし、金融庁認定機関での相談も可能です)
これらのことを踏まえて、一番申し上げたいのは
銀行は怖くない
ということです。
個人の方は個人信用情報に注意
では、住宅ローンの返済がしんどくなってきた個人の方は何に注意しなければいけないか。
個人の方においては、事業者よりも銀行に行くハードルが高いと思います。
特に住宅ローンを組んでおられる方はほとんどが、借入といってもそれだけで、銀行の融資課なんて遠い存在と思っておられるでしょう。
だからこそ、やりがちなのは「延滞」してしまうことです。
「今月の収入が厳しいから、2〜3ヶ月待って貰おう」
実はこれがやってはいけない一番のことなのです。
住宅ローンの借入返済が滞ると、銀行(保証会社)からの情報が【個人信用情報】に登録されます。
【個人信用情報】とは、ローンやクレジットなどの借入情報と返済情報が集約されているデータバンクで
CIC(指定信用情報機関)
JICC(日本信用情報機構)
KSC(全国銀行個人信用情報センター)
など、いくつかの機関があります。
以前は銀行で普通に情報を取ることが出来ましたが、今では個人情報の取得が難しくなり個人の同意を得ないと取れません。
現在は、住宅ローンの申込やマイカーローンの申込などの時には同意書を一緒に提出させられていると思います。
ここで、延滞実績などがあると、融資だけではなくクレジットカードや割賦販売購入なども出来なくなってしまうのです。
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この情報は一般的には5年経たないと消えません。
住宅ローンを数ヶ月延滞するだけで、そこから5年間多くの制限がかかってしまいます。
決して延滞することは避けるべきです。
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まずは銀行に相談に行く
個人の方も、返済がしんどいと思ったらすぐに銀行に行って相談することをお勧めします。
金融円滑化法にもあるとおり、銀行は前向きに対応してくれるはずです。
繰り返し申しますが、個人の方は、延滞することで個人信用情報に載ってしまうことは絶対に避けるべきです。
そしてもう一つ気をつけることがあります。
リスケの金額についてです。
住宅ローンの組み替えなしに、1年〜2年の期間だけ返済額を下げるとした場合
月々の返済額を下げることによって融資残高が増えてしまう可能性があるのです。
特に住宅ローンを借りたばかりで残高が多い場合は注意が必要です。
住宅ローンは元利均等返済といって、毎月の返済額を同じにしています。
月々の元金支払いと利息支払い割合を調整することで、毎月の返済額を同じにしているのです。
つまり、元金が多い時には毎月返済額の利払割合が非常に多くなってきます。
徐々に元金が減ってきて利払が少なくなってくると元金の返済割合が上がってくる仕組みなのです。
月々の返済額を毎月返済額のうちの利払に充当している金額より少なくしてしまうと、
支払えなかった利息は元金に乗ってきてしまい、
結果として住宅ローンが増えてしまうことになるのです。
(過去、住宅ローン金利が大幅に上がった時に返済額より利払必要額が増えてしまい、多くの住宅ローンで元金が増えてしまうという事態が起こったことがあります)
具体的に説明します。
月々の返済額が100,000円だったとします。
これを月々50,000円にリスケしたい。
借入期間にもよりますが、住宅ローンの最初の方でしたら、100,000円のうちの80,000程度は利息支払いとなっていると思われます。
返済は利払部分から先に行われます。
つまり50,000円の返済にすれば、まず80,000円の利息の支払いに充当され、
30,000円の利息が支払われずに残ります。
元金の返済は当然0円となってしまいます。
支払えなかった30,000円の利息は、元金にプラスされ、結果として融資額が増えてしまいます。
(元本は払わなくても、利息は必ず払わないといけないということですね)
住宅ローンの元金と利息の支払い割合については、お手元の返済明細に記載されていると思います。
これらは極端な例ですが、言いたいことは、月々の返済額は大きく減らせないことが多いということです。
(銀行でリスケ相談すれば、ローンの組み直しが基準となりますので、元金と利息の割合は再計算され元金が増えるということは無くなりますが、思った金額に減らせないということが十分にあり得ます)
月々の返済額をできるだけ下げるには、ボーナス返済の調整などで月々の返済額の利息と元金の割合を変えることです。
(ただし、ボーナス返済時には返済額が多くなりますし、ボーナス返済に充てられる元金は通常全体の1/2です)
それ以外で月々の返済額を減らそうとすると借入期間を伸ばすことが必要になってきます。
住宅ローンの期間延長は、改めて審査を受ける必要がありますが、
・最長35年まで(銀行によって異なるところもあります)
・完済時年齢80歳(銀行によって異なるところもあります)
・返済比率30%〜40% (銀行、年収によって異なります)
これらの基準をクリアする必要があります。
伸ばしたとしても、金利を上乗せされたり、保証料が増えるなどデメリットが生じることも理解しておいてください。
住宅ローンのリスケはなかなか難しい部分はありますが、ある程度の期間だけ返済額を減らし、それ以降は今より返済額が増えても良いなら、
利払だけにする、利払プラス元金少しだけにする などの対応は可能です。
(他の銀行に借換えをしてもらい、そのタイミングで金利を引き下げたり、期間を伸ばしたりすることが一番簡単かも知れません。ただその場合、担保の設定費用等も加味して考える必要があります)
住宅ローンの返済が負担になってきた個人の方は
借入の期間延長、ボーナス返済割合の変更、利払のみの対応
これらを踏まえて早急にリスケを銀行に相談されるのが良いと思います。
借入している皆様にとって、想定外の事態が起きた時、当初の計画が変わってしまった時、
事業・個人を守るためにリスケを行うことは決して間違いではありません。
きちんと話をすることで受け入れられると思います。
銀行を怖がらず、面倒臭がらずに訪れてほしいと思います。
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