今回は、事業計画書の作成についてもう少し詳しく見ていきましょう。
事業計画書は必要なの?
この後に及んで何故こんな話しがと思われるかもしれません。実は、日本政策金融公庫総合研究所のデータによりますと、男女起業家の約25%しか事業計画書を作成していないということです。個人事業者として事業を始める人や、融資を受ける必要がない人は事業計画書を作らない傾向にあるようです。
事業計画書作成のメリット
しかし、事業計画書を作ることで、ご自分の事業が目に見える形となり頭の中も整理出来るというメリットがあります。もちろん、知りたくないところ、見たくないところにまで手を入れなければならないのですが、これは経営者として不可欠なことだと思います。また、融資を受ける際には、つまりご自分の事業を他人に説明する際には必要であるということもご理解ください。
事業計画書の作成ポイント
事業計画書はご自分の事業をいかにして実現していくかを、思いではなく見える形で表現したものです。事業計画書を作っていくにおいて、本当にご自分がやりたいことや、ご自分の事業の成功の見込みなどがはっきりとしてきます。
① 全体の構想や事業イメージを固める
創業の動機や事業の目的、将来的なビジョンをはっきりとさせることが必要です。それを文章や図など見える形にしていきます。根拠として、これから始める事業の市場調査を行い、規模や将来性、取り巻く環境を明確に意識します。
② 具体的なビジネスモデル
市場調査の結果もふまえて、自らが提供する商品やサービス、技術にどのような特色があるのか、ターゲットとする顧客とどうニーズマッチするのか。他社とどう差別化していくのかといったことを形にします。どのように事業を成長させていくか、スケジュールすることも重要です。
③ 収支計画
初年度、中長期にわけて創業当時の収支予測と儲かってきた時の収支予測を立てていきます。どのように売上が伸びていくか、利益率が上昇していくかなどを、根拠をもって説明出来ることが必要です。
④ 資金計画
(③と④はどちらが先でも構いません。計画しやすいほうから手をつけてください)
資金計画には「資金繰り計画」や「返済計画」も付随します。まずはどれくらいお金が必要なのか、どうやって調達するのかを検討します。その次に、時系列で、それらの資金がいつ入ってきていつ出ていくのかを考えていきます。「資金繰り計画」「返済計画」はこの時系列の部分です。資金計画については、資金調達できなかったときのケースや代替品で対応した場合のケースなど、いくつかのパターンを用意しておくほうが、いざという時に慌てずにすみます。
事業計画が苦手
特に女性創業者は、事業計画が苦手とおっしゃる方が多いように思います。しかしこれは男性女性の差というよりも、そういったケースにかかわった経験の有無によるような気がします。銀行交渉なども含め、現在の日本企業ではどうも男性のほうがそういったポジションに座ることが多いように見受けられます。
脳科学的には女性のほうが計画立案に向いている
「現在」と「将来」にフォーカスをあてた場合、脳科学的には男性は「現在」女性は「将来」に重点を置いていると言われます。男性は、いま現実に直面している問題しか頭に入れて考えることが出来ないが、女性は、現在と未来を同時に頭に入れて考えることが出来るというものです。すべてにおいて当てはまるとは思いませんが、この研究結果からいきますと、あきらかに女性のほうが事業計画に向いていることになりますがどうでしょうか。
収支計画や資金計画を立てるために
収支計画や資金計画を立てるために、売上や経費の予想をしていかねばなりません。とくに計画上の売上を根拠立てて作っていく場合に、経営戦略の重要な項目でもある販売計画や仕入計画などを作っていくことが必要になってきます。
販売計画を立てるために
販売計画を立てるための検討事項はつぎのようなところです。
・必要な売上を確保するために【だれが】必要なのか。自分ひとりなのか、従業員が何人必要か。
・ターゲットとする顧客は【だれ】なのか。顧客層を絞り込むことで顧客単価や商品の品揃えを絞り込んでいくことが出来ます。
・市場調査によって顧客層や立地条件を限定することで【何を】取り扱うのか、商品やサービスが固まります。
・販売方法は【どのように】するのか。対面販売なのか、ネット販売なのか など、販売方法を決めることで、販売量やコストが固まってきます。
・事業を【どこで】行うのか。自分の事業にマッチした事業立地にすることで、立地に合った商品や販売方法などを選定し、付随するコストなども明確にします。
・【販売条件】をどのようにするのか。支払いサイトや回収の現金比率によって資金繰りが変わってきます。
・【営業時間】はどうするのか。これは人件費等のコストにも直結する問題ですね。
仕入計画を立てるために
仕入は売上や利益に直結する問題ですから、きちんと押さえておく必要があります。
・【商品の確保】販売戦略に沿った商品の確保が可能かどうかは十分に確認する必要があります。
・【どこから】必要な商品を必要な時期に調達出来るのか。
・【どんな条件】で仕入れるかは販売条件と同様、資金繰りを決定する重要な事項です。支払いが現金なのか手形なのか、支払いサイトはどうなのかなど、きちんと確認しておきます。
・在庫は【計画的に】仕入れるように計画します。在庫負担は思った以上に資金繰りを圧迫しますので注意してください。
以上が事業計画書作成の流れとポイントになります。おおまかにお話ししただけでもけっこう考えることが多いと思われるのではないでしょうか。しかし、これからご自分の事業を始め、大きくしていかれるのであれば、こういったポイントを押さえていくことはマイナスにはなりません。
次回は、資金面の計画についてお話しさせていただきます。
テイクオフパートナーズ代表
MBA
2級知財管理士
2級ファイナンシャルプランナニング技能士
西谷 佳之
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