女性が活躍出来ないことには訳がある
女性活躍は政府が推進する政策ですが、なかなか進んでいないといいます。女性活躍が進んでいない理由として、公益財団法人日本生産性本部の発表によると、
①性別役割意識 ②インポスターシンドローム が挙げられています。
①性別役割分業とは、日本社会に深く根付いている考え方です。
たとえば「女性が家事をすべきだ」や「営業は男性、経理は女性が適任だ」といったものですね。
内閣府が発表した【令和4年度 性別による無意識の思い込みに関する調査研究】では
男女それぞれのもつ性別役割意識については以下の通りとなっています。
職場に関しての質問で言えば、
「育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきでない」
「組織のリーダーは男性の方が向いている」
が男女とも1位、2位となっていることに気が付きます。
②インポスターシンドロームとは、自分の実力を過小評価し、自分の成果を認められず、
周りをだましているような感覚に陥るような症状で女性に多い考え方のクセだとされています。
行動心理学においても男性の方がリスク許容度が高く、
女性は低く慎重だといったことが言われています。
ある質問に対して、100%自身が無くても男性は手を上げるが、
100%自身が無いと女性は手を上げないといったものです。
これらの理由は、すべて現状の考え方を変えていくことで解消していくことが可能なことです。
時間はかかりますが、従業員が理解していくことや、制度やポジションを変えることなどで
活躍推進を進めていくことが求められます。
女性活躍を妨げるもう一つの観点
企業は制度を改めたり、意識改革を行うことで女性活躍の推進を行って行きますが、それでは解決できない問題があります。
それは生物学的身体的なギャップです。
女性活躍で求められているジェンダーギャップの解消は、
「もともと個人としては性別に関係なく平等であり、
性別が付加されることでギャップが生まれているので、
その考えを解消して出来るだけフラットな状態に戻す」
といったもののように感じます。
つまり、考え方や思い込みを無くして平等に活躍できる場を作りましょう、といったことだと解釈できます。
ところが、人間は生物ですので、当然オスとメス(男性と女性)に身体的には分かれてしまいます。
種を反映させるのに必要な自然の摂理です。
この身体的な特徴差については、考え方を変えたり、
制度を変えたりして埋めることは不可能なのです。
そして、この身体的な特徴差は特に女性に負担を強いることになります。
パフォーマンスの低下と経済損失
女性だけが子供を産むことが出来ます。
ところが、その代わりに子供を産むための生理的な現象が男性より圧倒的に大きく、
体に負担をかけているのです。
女性活躍、健康経営といった施策を企業が行う目的は、最終的には企業の業績向上に繋げることです。
そのためには女性の身体的な健康課題を意識することが重要なポイントとなります。
今回は月経にスポットを当てますが、
「疾患・症状が仕事の生産性等に与える影響に関する調査:2013年健康日本21推進フォーラム」
によると、男女ともにアンケートをしたにも関わらず、
1位 メンタル不調
2位 心臓の不調
3位 月経不順・PMS等による不調
と、女性のみに特有の症状が入っているのです。
それだけ多くの女性が抱えている問題なのですね。
なお、平成31年に経済産業省が発表した「健康経営における女性の健康の取組について」では、
月経に伴う症状や不調による経済的損失額は年間で4,911億円と試算されています。
同じく経済産業省の2018年「働く女性の健康医推進に関する実態調査」では、
『生理に伴う不快な症状が仕事に与える影響は?』の問いに対して、
75.4% の女性(n=1956)が【仕事や勉強の効率が落ちる】と回答しています。
(2位【ミスが増える】27.8% ・3位【仕事や学校に行くのがつらく休む】24.2%)
さらにその中で、『生活全般や仕事に影響を与える不快な症状は?』の問いに対し、
症状が強いが我慢している人の割合が66.4%と半数以上でした。
つまり、
半分以上の職場の女性は、生理による不快な症状を我慢しているのです
『不快な症状の影響を受けているときの仕事の出来は?』の問いに対して、
症状が無い時と比べて点数化したところ、仕事のパフォーマンスは
約4割ダウンしているという結果になりました。
日経BPの試算では、40歳以下の女性社員100人を雇用する企業だとすれば、
年間 約2,209万円 の労働損失だと算出されました。
つまり、女性の生理に関する問題を解決すれば、40歳以下女性社員1人につき
最大年間 約221万円 の労働利益が得られるということになります。
生理に関する問題とは
ここで表題の問いですが、【PMSと生理痛の違い】とは何でしょうか。
おそらく男性管理職の方がご覧になっていた場合、
半数以上の人が答えられなかったのではないでしょうか。
女性でもわからない人がおられるかも知れません。
簡単に言うと、PMSとは月経前症候群の略で、生理の3~10日前に感じる不調の事を言います。
生理痛は文字通り月経の出血が続いている3~7日の期間内に感じられる不調の相称になります。
PMSはイライラや抑うつ気分など精神的症状や頭痛、腹痛などが主に見られますが、
生理痛(月経困難症とも言います)は、強い下腹部痛、腰背部痛などが主な症状です。
ご存じなくても当然かと思います。なぜなら、教えてもらっていないだろうからです。
特に昭和世代の男性はこの手の教育を受けていなかった可能性が高いです。
日本の性教育は各国と比べ劣っています。ここではあまり詳しく言いませんが、
もともとが「陰茎」「陰部」など「陰」という文字を使うことからもわかる通り、隠すことを良しとする文化でした。
1970年以降性教育が盛んになり、開放的な教育を進める基調になってきましたが、
2002年ごろからの性教育バッシングを受けたこともあり、一気に縮小してしまったようです。
現在でも「性交」という文字は使ってはだめ、「性的接触」なら良いなどといった文部科学省の規則があり、
伝えることも難しい中、知識が多くの人にいきわたっていないことが、
女性活躍、健康経営が進まない要因に繋がっているのかもしれません。
女性においても知らない方はもしかしたら、おられるのかも知れません。
それ以外にも、自分のデリケートゾーンの状態やケアの仕方など。
これらは、なぜか日本の性教育では教えてもらえなかったのです。
そのせいなのか、ケアには無関心な方が多いように思います。
それ以前にケアが必要だと認識しておられない方すらおられます。
先述のPMSや生理痛についても我慢するだけで(数日間やり過ごせば痛みも取れる)といった考えの方が非常に多いようです。
中には薬すら飲まないで頑張る方もおられるとか。
当然仕事のパフォーマンスは下がりますよね。
婦人科に行って、きちんとした診察を受け、必要な処置をしてもらえば痛みはかなり和らぐことが期待できます。
低容量ピルを服用して月経をコントロールすることで計画立てて生理を迎えることも可能です。
海外では低容量ピルを飲み続け月経を避け続けている人もいるとか、多くの手段があるのです。
女性活躍、健康経営の一環として、まずは通院するための時間や資金の援助、お金のかかる生理用品や
鎮痛剤、低用量ピルの支払い補助制度などを始めると効果的だと思うのですが。
特に男性管理職はまず知識を蓄えて
他にも、女性特有の健康課題は多くあります。
妊娠、出産、更年期(これは男性もありますが)など、
女性が抱える体の悩みは多いのです。
管理職として各個人のパフォーマンスを上げることを目指すならば、
まずはこれらの知識を身に着けることから始めてみてはどうでしょうか。
おそらく皆さんが思いもよらなかったことがわかってくるのではないでしょうか。
たとえば、月経について言えば、毎月決まった周期で経血が出るのではなく、
量も日にちもまちまちなのです。
皆さんの周りの女性は毎月どうしているのでしょうか。
実はいつ来るかわからない出血におびえているのではないでしょうか。
下着やスカートやズボンまで経血が染みていないかどうか、とても気になっている女性は案外多いのです。
会議が長引いたときにトイレに行けないことで、その危険性が高まるのならば、あえてブレイクタイムを取ってあげるとか、
トイレにナプキンを無料で設置するように働きかけるとか、知ることで思いつく環境改善が増えてくると思います。
日本人、特に男性の、女性特有の健康課題に対するヘルスリテラシーはとても低いです。
ヘルスリテラシーを向上させる取り組みを推進すれば労働生産性の向上に繋がるのです。
生物学的にどうしようもないギャップをどのように克服し、同じラインに立つようにするか。
これが女性活躍、健康経営の大きなポイントではないかと思うのです。
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