地方創生の多くが失敗している
現在、自治体が中心となって行われている地方創生ですが、いくつもの成功事例が取り上げられている一方で、
その何倍、何十倍もの地域で失敗していることは、大々的に報じられることがありません。
なぜ地方創生が失敗しているのか
地方創生が失敗している要因は、いろいろなところで語られています。
主な要因としては、
◯ 他の地域の成功事例をそのまま自分達の地域に導入しようとしている
◯ 自治体が主導でやっているが、担当者や部署に失敗のペナルティや成功のインセンティブは無い
◯ 人を呼び込む、人口増加という目線から離れられない
◯ 他所の失敗事例は伝えられず生かされていない
といったことが挙げられています。
私が携わった自治体においても、コンサルに頼めば「後はやってくれる」といった他力本願感が漂う自治体がいくつもありました。
コンサルについても、異なる地域で異なる手法の地方創生を成功させているコンサルは本当に少ないと思われます。
人口の増加が地方創生だという妄想
何故か地方創生は、どうやって他所から人を呼び込むか、人口を増加させるか の一点から考えられているように見られます。
かつて1988年竹下内閣が行った「ふるさと創生」での1億円交付(使い方自由)の時の二の舞です。
あの時も結局は自治体が人を呼び込むことのみに創生を見出したことから、散々な結果となったことは記憶に新しいですね。
・純金製のこけし
・日本一の自由の女神
・日本一長い滑り台
・純金製カツオ像
・世界一大きい狛犬
・金塊レンタル
など、さて、どれだけの効果を発揮したでしょうか? 継続して効果のあった施策はどれくらいあったでしょうか?
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地域の数だけ地方創生のパターンがある
各地域が置かれている環境はそれぞれ全て異なります。
なので、地域の課題、ニーズは、他の地域と異なると言うことは、考えれば誰にでもわかることですが、
何故か成功事例をそのまま導入しようとする自治体が後を絶ちません。
しかし、それはしょうがないことなのかも知れません。
何故なら、自治体で担当される方は、地方創生専門で採用されたわけではなく、
地方創生に関して深い専門知識がある方は非常に少なく、
多くの方が任命されてから対応に追われているからです。
自治体の苦悩
自治体で地方創生だけ専門職として、給与体系も評価体制も独立しているところは無いのではないでしょうか。
本来は、地方創生の成功度合いによって人事考課が変わるといったインセンティブがあれば取り組みも変わってくるのかも知れません。
これが民間企業なら違います。失敗は直接損失に結びつき、成功したら直接利益に結びつきます。
地方創生を主導しなければなりませんが、そこまで職員に負担を負わせるわけにもいかないのは、自治体の採用基準やあり方にあるのかも知れませんね。
「地方創生で収入増加」の先に自治体が見出したもの
地方創生の目的は地域の活性化、つまりは地域の収入の増加。
その考えのもと、自治体が行った手段が『ふるさと納税』です。
たしかに、ふるさと納税は一部の自治体、特に一部の地方自治体の収入を増やすことに繋がりました。
しかし、直接的な目に見える効果は、財政が厳しかった自治体にとって、あまりにも魅力的でした。
その結果 競争が激しくなりモラルハザードが起きてしまったことは記憶に新しいですね。
ふるさと納税の競争激化
ふるさと納税をした人は、10,000円の寄付をすれば8,000円税負担が軽くなります。
寄付を受けた自治体はリターンに5,000円の商品を送るとします。
ふるさと納税をした人は、2,000円で5,000円のリターンが得られますね。
寄付を受けた自治体は、10,000円の寄付を得て、5,000円のリターンと送料などでかかる費用以外は収入になります。
費用が1,000円としても、4,000円のプラスです。
じゃぁ、プラスの4,000円が3,000円になってもプラスだからいいか、じゃぁ、2,000円になっても、、、と、
どんどんエスカレートしてきたのですね。
リターンは3割まで!と政府が示達したあとでもです。
あまりにひどいので、総務省は2018年7月6日、
・原則としてリターンを地場産品とすること、
・調達価格を3割以下に抑えること
という通知に、従う気のない全国12自治体の名前を発表しました。
総務省も過剰な返礼品競争に歯止めをかけたいのですね。
なぜなら、本当は納税者が得をした8,000円は、所得税とふるさと納税者の居住区の自治体住民税が減らされており、
日本全体としてはプラスマイナスゼロなので、当然 損をする自治体が出てくることになるからだと思います。
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自治体が行うガバメントクラウドファンディング についてはこちらをご参考に
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今回は新たな地域創生手段として、またレッドオーシャン状態である購入型クラウドファンディングのプラットフォーム業者からは ある程度まとまった金額が集まる新たな収益源として注目されている「ガバメントクラウ ...
自治体の地方創生への関わり方
自治体の地方創生の関わり方については、いろいろ問題もありますが、
・地域の人々の視点
・地場企業の視点
・公共の視点
など全体的な目線で、公正に地域を見ることが出来るのは、やはり各自治体しかありません。
担当者の直接の損得に繋がらないからこそ、冷静に判断出来るのではないかと思います。
しかし現状のような自治体主導では、先述した問題が起こってしまっています。
では、誰が地方創生を行なっていくべきでしょう
イタリアの事例を参考に
イタリアは、日本と非常に似た環境ながら地方創生を成し遂げています。
イタリアは「カンパニリズモ」と言われる郷土愛が有名です。
加えてそれぞれの地域が経済的に独立していて強いのです。
その要因は地域と地場企業の密着度が非常に高いことにあります。
イタリアも第二次世界大戦の敗戦国です。
そして、人口減と都市部への人口流入に伴い地域が疲弊してきたのも日本と非常に似ています。
イタリアはその状態から、中央政府が産業政策の権限を地方自治体に渡しました。
その結果、地方が強くなり、中小企業が力を持ち、地域毎に世界的企業が出現するに至ったのです。
メガネのベッルーノ
家具のムルジャ、ウディネ
陶器のファエンツァ
食品のパルマ、シチリア
他にも多くあります。
地域によって業種が異なる、つまり企業が地域の特色を決め、それを伸ばしていった結果、地域が発展していったのです。
起業家こそ日本の地方創生を担うべき
イタリアの事例をみてもわかる通り、地域のニーズを一番わかっているのは、その地域の企業なんです。
そして、今の企業が力を落としているなら、新しいニーズにマッチした企業が出てくることが地方創生のカギになります。
実は地域ではいくつもの起業家が起業しています。
地域が疲弊している中で、事業を起こし、それが成功するということは、ニーズに合った事業だと言うことです。
自治体はこういった起業家に投資し、育てることに注力すべきであり、
実際の地方創生、つまり地域が栄える仕組みづくりは、それらの起業家に任せるべきだと思います。
自治体が公正な立場で地方創生の枠組みを監視し、起業家同士のマッチングやコーディネートを行い、
起業家たちの出来ることを重ね合わせて地方創生を行っていくのです。
地域起業家が利用すべき「地域未来促進法」
国は地域が発展の基盤を整備できるように「地域未来促進法」を発令しました。
成長分野の需要を取り込めるようにと言うことです。
つまり、地域の成長事業支援の為の施策なのです。
「地域未来促進法」によって受けられる支援は、
・販路開拓や事業化戦略などの、専門知識を持った人材の紹介やアドバイス
・先進的な事業に必要な設備投資に対する減税
・農地転用許可、市街化調整区域開発などの許可基準緩和
・特許料や固定資産税の減免
などがあります。
企業は、計画を作り地方自治体に承認を受ける必要がありますが、
これによって、事業のボトルネックが解消出来れば、事業は大きく前に進んで行くと思われます。
また、なにより自治体との距離が縮まり、歩調を合わせていくことで、地方創生と自社の成長が大きく進んでいくでしょう。
クラウドファンディング やVALUで地域外の支援を集める
地方創生はその地域にヒトを集め活性化することだけではありません。
地方創生を成し得たイタリアの企業は、地域にヒトを呼んでいるのでしょうか。
彼らは地域の特色を最大限に生かし、世界的な企業となっています。彼らの顧客は地域の中にのみ居るのではないのです。(結果として、雇用が生まれるなど、人口増加に貢献していますが)
地方創生はその地域の経済活性化でもあります。
地元企業が元気になることが地方創生に繋がるのです。
多くの支援者つまり顧客を、地域外に持つことが重要なのです。
なので、企業がクラウドファンディング やVALUなどを使って、支援者を広く募っていくことが、地方創生の成功の秘訣なんだと思います。
クラウドファンディング とVALUなどの違いにつきましては、改めてブログにもアップさせていただきます。
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テイクオフパートナーズ代表
MBA
2級知財管理士
2級ファイナンシャルプランナニング技能士
西谷 佳之
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・財務分析の勘所
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