MBA ファンディングアドバイザー®西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

創業

失敗が怖くて起業が進まない? 日本人が多様性を受け入れる必要性とは

更新日:

日本は起業割合が低い

日本は他の国と比べて起業率が低いと言われています。

これは、中小企業庁が発表している「2019年度中小企業白書」からの引用ですが、日本は5.6%(雇用保険ベースに雇用が発生した件数を前年度雇用件数で割った値)と他の国に比べ明らかに低い数値となっています。

また、起業を希望する人たちの人数も減少傾向にあります。
この図をみると、女性の起業志向者、副業志向者の減少度合いと比べ、男性の、特に起業志向者が1992年と比べ減少率が高いのがわかりますね。

なぜ日本人は他の国と比べて起業を目指す人が少ないのでしょうか。

日本で起業が進まない要因

上の図は、「起業家が起業を断念しそうになった際に直面した課題」を示しています。

この図から、個人の環境やビジネスモデル以外に、日本で起業が進まない要因として以下のことが読み取れます。

・資金調達

第一の要因は資金調達です。

金融機関

日本では起業時の資金調達が非常に困難だと言われています。
銀行からの調達は、実績が伴わない状況ですから極めて困難と言わざるを得ません。日本の銀行はなかなか未来の可能性に融資しようとは思わないのです。

多くの銀行が創業支援融資などのメニューを用意していますが、長くとも2〜3年の間には返済が始まります。
新規事業時期にとって返済負担は資金繰りを圧迫します。きちんと売上が立っていない中での返済負担は吸収することが難しいのです。

また、自己資金がいくらあるかによって融資金額が判断されることも融資金額が伸びない大きな要因です。
他国ではむしろ投資感覚が大きく、ビジネスモデルに対して資金を付けることが当たり前となっています。

告知不足

さらに、政府の支援施策に関する告知不足も大きな要因です。多くの予算が付けられ、創業支援制度などいくつも施策があるのですが、情報を手にする人はごく一部となっています。
現状、そのなかで申請書をうまく記入できる企業だけが補助金などを受けれていますが、多くの小規模企業、個人事業者などまでには回っていないのが現状のようです。

人材市場

質の高い人材の確保も社会的な要因となります。

1958年にジェームズ・C・アベグレンという学者が指摘した日本的経営の特徴は・終身雇用・年功序列・企業別組合でした。
そして、その形は多少変わったといえども、大きくは変わっていません。今だに日本の人材市場は流通性に乏しく、会社を辞めることに対する罪悪感は年配者になるほど持っています。

最近ではようやく若い人たち中心に、転職の動きが出てきましたが、起業したとしても、中堅どころのスキルを持った人材の確保は困難な状態です。

このように人材市場が流動化していない中では、多くのベンチャーの人材確保は難しく、そういった背景もあり起業マインドは育たないと言われています。

日本社会

日本では、失敗をゆるさない文化が根付いています。

たとえば、一度破産した企業の経営者はそういった社会風習から、なかなか日の目を見る機会に巡り会えません。
(倒産=悪)といったイメージが植え付けられているのです。

そのような社会なので、日本人は失敗をすることを恐れ、リスクを取れずチャレンジ精神に乏しくなってしまうことは否めませんね。

日本人が失敗を恐れリスクを取らないことは海外からも多く指摘されています。

日本人が失敗を恐れる根本的な理由

経営知識や専門知識の習得については、どこまでが必要だということではなく、おそらく、今のままでは失敗しそうだというマインドに陥ってしまうことだと思われます。

なぜ、日本人は失敗を恐れてしまうのでしょうか。

日本人が失敗を恐れる要因は大きく3つあると思われます。

過去からの文化

『ハラキリ』は外国人から見ると理解できない行為とのことです。
日本では武士の時代には、失敗すると命で償うという文化がありました。
つまり、それだけ失敗することは重大なことであったのです。

「切腹」という文化自体は戦国時代後期から今の概念となってきました。
それまでは「切腹」が特に名誉な自殺方法と見られることはなかったようです。
一説には豊臣秀吉が備中高松城攻めを行い、講和条件として城主清水宗治の命を要求した際に、宗治は潔く「切腹」し、その態度や作法が見事だったことから、以後「切腹」は名誉ある行為となったと伝えられています。

海外の人からすれば、「失敗したら命を捨てるのではなく、生きて汚名挽回すべきだ」と思うのでしょう。現代の日本人も当然同じ考えだとは思いますが、どこかに「失敗してはならない」という思いが根付いているのだと思います。

教育

日本の教育が、失敗を恐れるようにしてしまっていると言われています。

日本の教育は、「何故失敗したか」を問いただす教育方法だと言います。
失敗したことで怒られた経験は、ほとんどの皆さんにあるのではないでしょうか。(失敗=悪いこと)というイメージが頭の中に植え付けられているのです。

最近は、怒らない、褒めるという教育方法にチェンジしている学校も多いと聞きます。「子供には罰より報酬を与えるほうが重要」との考えだそうですが、少しばかり違和感を持った方もおられるのではないでしょうか。

実は面白い実験があります。コロンビア大学での研究です。

10歳〜12歳までの子供400人に知能テストを受けさせました。
その後答え合わせをするのですが、子供達には実際の成績を隠しておき、すべての子供に100点満点中80点だと言いました。
子供たちは3つのグループに分けられ、
・① 本当に頭がいいんだね と褒める
・② 努力の甲斐があったね と褒める
・③ 何も言わない
という言葉を付け加えられます。

その後、普通の子供たちには解けないだろう難しいがやりがいを得られる問題と、誰にでも解ける学びの得られない問題を選択させました。

すると、結果は、①の褒められたグループの子供は65%が簡単な問題を選んだのです。
(②のグループは10%、③のグループは45%)

さらに、後の問題の点数を発表させたところ①のグループの40%の子供が点数を多めに言った、つまり嘘をついたそうです。
(グループ③では10%)

つまり、褒められた子供たちは「頭がいいと思わせなければならない」という思考が先に立ってしまい、無難な道を選択し、頭が良いという評価を得続けるために嘘をついたということなのです。

褒めて育てるという方法は確かに良い方法かも知れませんが、難しいことにチャレンジする精神は育たない、つまり起業したい人たちも育たないのかも知れません。

親の考え方

日本の親の考え方も、失敗を恐れるような教育に、知らず知らずのうちになっているのです。

子供の通信簿が渡されました。

国語:4 算数:3 理科:1 社会:3 英語:5

となっていました。皆さんは子供たちにどう伝えますか?

おそらく多くの大人たちは「理科をもっとがんばらないと、いい中学に入れないよ」とか言うのかも知れません。日本人(両親)は極端に悪いものを放っておけないのです。

アメリカでは点数の高いものがその子供のスキルであるとし、それを伸ばすように育てるようです。

そういったところからも、失敗に対する罪悪感が生まれているのです、知らず知らずのうちに。

失敗は悪いこと?

このように日本人は、失敗してはならないという感情が強く働き、挑戦するということが他国と比べ不得意だと言います。

しかし、ほんとうに失敗は悪いことなのでしょうか。

振り返れば、誰もが失敗をしてきたと思います。
そして、失敗して怒られたこともあるのではないでしょうか。

そして、失敗するリスクを取らないと、成功する可能性は高まらないことも分かると思います。

失敗することの意義

発明家トーマス・エジソンの言葉です

「失敗は積極的にしていきたい。なぜなら、それは成功と同じくらい貴重だからだ。失敗がなければ、何が最適なのかわからないだろう」

失敗を恐れることはまったくの無意味だということですね。

また、大リーグのイチロー選手は3,000本安打達成の時のインタビューでこのように言っておられました。

「僕は日米通算3,000本安打を達成したけれど、6,000回以上の失敗があります。失敗から、たくさんのことを学んでほしい」

失敗は成功するのに必ず必要なことなのですね。

しかし、頭ではわかっていても、実際ことを始めようとすれば、どうしても安全な方に考えが言ってしまうのが多くの日本人なのです。

日本人は多様性が無いと言われるが

「日本は99%日本人だけで成り立っている単一民族国家だから多様性が無い。だからイノベーションが生まれにくく、多様化しているグローバル社会で遅れをとっている。」

と言われています。

たしかに、日本は世界でも有数の母国語が1つだけの「モノリンガル国家」です。世界各国に比べれば全国民に同じ教育が行き届いています。

異なる考え方を排除する傾向もあるかも知れません。
しかし、個人個人を見れば、異なる考え方を持っており決して多様性が無いとは言えないと思います。

ただ、それを認める力が弱い文化なのですね。

多様性を受け入れることで起業は進んでいく

起業マインドを高めるためには、失敗に対する考え方を変えていく必要があります。失敗を受け入れる文化の醸成が必要なのです。

そのために、多様な価値観や考え方などを可視化し、認識した上で、最適解を自ら導き出す姿勢が必要だと思います。

多くの考え方を理解し、認めることで、失敗に対する恐怖感も薄れ、チャレンジする起業家も増えていくのではないでしょうか。

「失敗」の捉え方を変えてみる

とはいえ、日本の文化を変えてしまうということは一気にできることではありませんね。

日本の社会は、他国と比べ、失敗することを悪とする風潮にありますが、個人としては、失敗を成功のための道のりと捉え、まずは失敗をしないと何も始まらない、くらいに考えてみてはどうでしょうか。

チャレンジすることで、可能性が大きく広がる事は頭の中では誰もがわかっていると思います。

先述のトーマス・エジソンの言葉です

「私たちの最大の弱点は諦めることにある。成功するのに最も確実な方法は、つねにもう一回だけ試してみることだ」

辛抱強くなんども試行錯誤することは、目標に向かうために避けては通れないことなのです。

科学者である彼のような目線に立って失敗を捉えることで、日本の起業家のマインドも高まっていけば嬉しいですね。

 

 

 

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西谷 佳之
大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。約10年 4ヶ店の銀行支店長経験後リレーション推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行ではほぼ全ての期間で法人取引を担当した経験や、支店長として着任したすべての店舗を業績表彰店に導いた手法とMBAの知識をもとに、個社別のコンサルタントや経営関連講演を行うことで事業サポートを行っている。 銀行の枠組みを超えた企業サポート手法のひとつとしてクラウドファンディングの可能性に魅力を感じ、クラウドファンディングを利用した事業サポートに注力している。 また、起業志向学生のメンターとして大学発ベンチャーのサポートも行っている。

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