MBA ファンディングアドバイザー 西谷佳之

金融機関経験を活かした中小企業の創業・経営支援

戦略 経営

「新事業」「新商品」を進めるために、考えてはいけない『サンクコスト』と、考えるべき『カニバる』こと。

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ひとつのビジネスで長く続けることは難しい

同じ事業を長くしていると、だんだんと類似商品が出てきたり、市場のニーズが変わってきたりしますね。

そうなると今までと異なるビジネスモデルに変更する必要性が出てきます。
いわゆる「事業立地の変更」というやつです。
また、同じビジネスでも スペックの異なる商品や、まったく新しい商品を作り出して売上をあげる必要性が出てきます。

もちろん、そのような必要がないビジネスモデルの企業もあります。
たしかに日本は 老舗企業、100年企業が世界的にも多い国ですが、それでも全体の一握りにすぎません。

多くの企業や事業者の方々が、継続するために事業や商品をたえず見直していく必要に狩られているのです。

事業立地の変更時に考えてしまう「サンクコスト」

事業立地を変更する、または新商品を開発する際に無意識に考えてしまううちのひとつが「サンクコスト」です。

「サンクコスト」とは、経済学やファイナンスでよく取り上げられており、「埋没費用」とも言います。
つまり、すでに支払ってしまった費用、取り返すことの出来ない費用のことを言います。

たとえば、ラグビーの観戦チケットを申し込んだとします。
当初1万円くらいまでならと考えていたのですが、なんとネットで7,000円で購入することが出来ました。

そして当日試合会場に行った時に、チケットを忘れてしまったことに気づきました。

当日チケット購入しようとしたのですが、幸運にも8,000円で購入できそうです。

あなたは当日購入しますか?

 

多くの人が、7,000円+8,000円=15,000円、高いな、と思ったでしょう。
1万円までならチケット購入しようと思っていたにも関わらずに。

つまり、この最初に支払った7,000円「サンクコスト」なのです。
この7,000円に縛られることで、人は考え方が変わると言います。

1万円以下ならチケットは安いと感じるはずなのに購入するかどうか悩んでしまった。

経済学的には8,000円のチケットを買うべきなのです。
チケットの購入という意思決定に「サンクコスト」は関係ないからです。

この「サンクコスト」が実際の事業立地の変更に大きな影響を与えてしまうのです。

「サンクコスト」=「コンコルド効果」

「サンクコスト」「コンコルド効果」とも言われます。コンコルドの事例があまりにも有名だからです。

コンコルドはイギリスとフランスで共同開発された、マッハ2の速度で飛べるスタイリッシュな旅客機です。
多くの国から引き合いがきました。

しかし、
・定員として100人くらいしか乗せられない
・燃費が非常に悪い
・音が非常にうるさい
こうしたことが明らかになったのです。

ところが、すでに多くの開発費を投入していたイギリスとフランスは引くに引けず、損をするのがわかっていたにも関わらず開発を続けてしまいました。

結果として、初期投資開発費用4,000億円だったものが、最終的に数兆円まで赤字を膨らませてしまったのです。

こういった事例から、「サンクコスト」=「コンコルド効果」と言われるようになりました。

サンクコストは無視をする

「サンクコスト」はすでに支払ってしまった資金であり戻ってはきません
なので、ビジネスでは「サンクコスト」無視をすべきだと言われます。
「サンクコスト」の呪縛にかかると、身動きが取れなくなってしまうからです。

「もったいない」の考え方を捨てて、ゼロベース思考でビジネスを考えるべきです。
失敗を次のビジネスに生かすと考えれば、勉強代として「サンクコスト」を捉えることが出来るのではないでしょうか。

事業立地の変更時にまず考えてはいけないのは「サンクコスト」なのです。

ではもう一つの考えてしまうことは何でしょうか。

カニバリゼーション

「カニバリゼーション」とは、もともと生物学の用語で「共食い」という意味です。
これがマーケティングの世界でも同じ意味で使われるようになったものです。

自社の製品や販売代理店が同じ市場で販売シェアを奪い合うことを
「カニバリゼーションを起こす」
(以下 カニバる)と言います。

従来製品が100売れている企業が、新製品を販売することになりました。
新商品の売上は幸先よく50売れました。

ところが、この企業が売上を集計してみると120しかありませんでした。なぜでしょうか。

実は新商品は既存商品のスペックを高めただけの商品でした。
そして 50のうちの30は、従来製品を買っていた顧客が新商品に乗り換えていたのです。
つまり、売上は
既存商品 100-30=80
新商品 50 

当社売上 80+50=120
となっていたのです。

このように、既存商品と新商品が同じ市場で顧客を奪い合うようになることを
「カニバる」といいます。

「カニバる」ことを恐れた事例

「カニバる」ことを恐れた事例として、コダック社の事例があげられます。

コダック社はもともと写真フィルムの製造メーカーで、富士フイルムが2000年に世界一の座を奪取するまで長年世界トップをキープしてきました。
写真フィルム市場は、デジタルの普及により富士フイルムが世界一になった2000年以降 急激に縮小し、10年で1/10にまでなってしまいました。
富士フイルムもコダックも、売上の大部分をフイルム事業が占めていましたので、大打撃を被りましたが、
富士フイルムは上手く事業立地の変換を行い、フイルム事業を一気に縮小し、生き残ることが出来ました。

(富士フイルムの事例は有名ですね)

ところがコダックは市場縮小の過程で倒産してしまったのです。なぜでしょうか。
コダックは写真フィルムにこだわり、デジタル化への対策を行ってこなかったからだと思われるでしょうか。

実は、コダックはどこよりも早く、1975年には世界初デジタルカメラの開発に成功していたのです。
なのに、なぜ変更出来なかったのか。

画期的な新商品を発売することで、既存の自社商品と競合し「既存商品の顧客」「新商品の顧客」に乗り替わること、つまり「カニバる」ことを恐れたのです。

その結果、新商品の販売をズルズルと遅らせてしまうことになり、最終的には倒産に至ってしまったのです。

「カニバる」ことを上手く利用する

このように、「カニバる」ことを恐れていると、事業機会を逃すことになりかねません。

ただし、前述の「サンクコスト」と異なり、無視するということばかりでもいけません。
「カニバる」ことを上手く利用することも必要なのです。

実際に積極的に「カニバる」ことを利用する戦略を取っている企業も多くあります。

トヨタなどが良い例で、同じ地域に複数の販売ディーラー(レクサス・カローラ・トヨペット・ネッツトヨタなど)を置き、ディーラー同士を「カニバらせる」ことで他社のディーラーの侵入を防いでいると言います。

また、クラウンの下位モデルとマークXの上位モデルはスペックが重なるようにするなど、車種同士でも「カニバる」ようにすることで、顧客を逃がさないという戦略を取っているのです。二重に「カニバらせている」のですね。

ほかにも製薬会社や医療器メーカーは、複数の商社やディーラーを代理店とすることで、どこが勝っても自社製品が納入される仕組みを作っています。

販売代理店を同じ地域や同じ市場で「カニバらせる」戦略は、販売代理店同士が「カニバる」ことで価格を落とすデメリットがある一方で、他社との競合に勝つというメリットもあるということなのです。

「カニバる」ことは戦略的に利用を検討する

一方で、ビール業界の発泡酒投入などは、より税金の安い発泡酒ジャンルのお酒を市場投入することで自社の売上拡大を目指しました。

しかし結果的には新しい市場の開拓をするのではなく、既存のビール市場の売上を食ってしまっただけに終わり、全体としての売上アップには繋がりませんでした。

また、ソフトウェア企業では、大企業向けのハイスペックな高額商品と、中小企業向けの低価格商品の2ライン製品を取り扱っていましたが、高額商品の価格競争力を高めようとして価格競争に応じた結果、中小企業向け商品よりもコストが安くなり低価格商品と「カニバる」ことになってしまった事例もあります。

このように、無計画に発生するカニバリゼーションは自社に不利益をもたらすため、十分に気をつける必要がありますが、
手を拱いてばかりでは機会を失ってしまうことにも繋がりかねません。

無計画な商品戦略の謝りや流通チャンネルの無秩序な多様化が、「カニバる」ことを招きます。

しかし、商品ラインナップを強化して他社参入を防いだり、自社内での競争原理を働かせたりするために
戦略的に「カニバる」ことを利用するケースもあるのです。

 

「カニバる」ことを、上手く利用して、「新しい事業」や「新しい商品」を市場に投入していくことが、事業の継続に有効なのですね。

 

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西谷 佳之
大阪生まれ 神戸大学大学院経営学研究科修了(MBA) 大学卒業後地方銀行勤務。約10年 4ヶ店の銀行支店長経験後リレーション推進部地域創生室を経験し、大阪大学産学共創本部特任研究員として大学発ベンチャーの創生に関わる。 一方で、中小企業支援をライフワークとし、テイクオフパートナーズを立上げ。銀行ではほぼ全ての期間で法人取引を担当した経験や、支店長として着任したすべての店舗を業績表彰店に導いた手法とMBAの知識をもとに、個社別のコンサルタントや経営関連講演を行うことで事業サポートを行っている。 銀行の枠組みを超えた企業サポート手法のひとつとしてクラウドファンディングの可能性に魅力を感じ、クラウドファンディングを利用した事業サポートに注力している。 また、起業志向学生のサポーターとして大学発ベンチャー創生にも携わっている。

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